新型コロナウイルスの感染が拡大する中、不適切極まりない閣僚の対応だ。
小泉進次郎環境相、森雅子法相、萩生田光一文部科学相が、私的な政治活動を優先し、16日に首相官邸で開かれた感染症対策本部会合を欠席していた。著しく見識を欠いた行動と断じざるを得ない。
小泉氏は地元の横須賀市で催された後援会の新年会に出席していた。酒も出た会合である。衆院予算委員会で野党議員に対し「政務官に代理出席させた。危機管理のルールにのっとった対応ではあるが、指摘を真摯(しんし)に受け止め、反省している」と答弁した。謝罪はしなかった。
森氏は地元の福島県で開かれた書道展の開会式に参加していたという。野党の追及に「危機管理上のルールにのっとり、政務官が代理で対応した。指摘を真摯に受け止め、反省している」と述べた。
萩生田氏は、東京都内の地元で消防団長の叙勲祝賀会に参加していた。「ルールにのっとり、役割分担しながら、副大臣が対応した。政務と公務のどちらが大事なのかとの指摘があれば、真摯に受け止める」と語った。
3氏に共通するのは、優先順位の判断を誤っていることだ。16日は日曜なのに対策本部会合が開かれたのは、それだけ事態が緊迫しているからにほかならない。他に重要な公務がない限り、何をおいても出席すべきである。
対策本部は安倍晋三首相が本部長を務め、全閣僚がメンバーになっている。16日の会合で首相は「国民の命と健康を守るため、引き続き打つべき手を先手先手で打ってもらいたい」と指示した。
法務省の主要な任務の一つは、出入国の管理だ。新型コロナウイルスの集団感染が起きたクルーズ船「ダイヤモンド・プリンセス」には、日本を含め56の国と地域の人々が乗っていた。
地元の行事のため欠席した森法相の行動は職責の放棄にも等しい。会議後に報告を受けていたのでは「先手先手」の対応などおぼつくまい。森氏は16日夜、自身のホームページに「本日、第10回新型コロナウイルス対策会議が開催されました」と投稿している。これを見た人は、出席したとしか思わないだろう。
何よりも深刻なのは、立場をわきまえない閣僚の振る舞いが、閣内で問題視されず、不問に付されている点だ。
菅義偉官房長官は「必要な公務や用務があればやむを得ない。閣僚が出なければ副大臣や政務官と連携してほしい」と記者会見で述べた。事実上、欠席を容認する姿勢だ。
このような緊張感を欠いた状態で、新型コロナウイルスの脅威に適切に対処することができるだろうか。
与党からも「大失態だ」という苦言や批判の声が上がる中で、安倍首相はなぜ、地元行事への参加を優先した閣僚を叱責(しっせき)しないのか。改めて首相の指導力が問われている。