<社説>検察官の定年延長 違法と認め決定の撤回を

 政府の国会答弁は既に破綻している。東京高検検事長の定年延長を違法、脱法と認め、直ちに取り消すべきだ。

 問題は1月31日の閣議決定で、政権に近いとされる黒川弘務東京高検検事長の勤務を半年間延長したことに端を発する。検察庁法は検事総長は65歳に達した時、その他の検察官は63歳に達した時に退官すると定める。定年延長の規定はなく、前例がなかった。
 政府は国家公務員法の定年延長の規定を適用したと強弁したが、権威ある専門書も同法の対象にならない事例として検察官を挙げる。当初から違法の疑いが指摘された。強大な権限を持つ検察官は一般の公務員とは性格が異なる。
 決定的だったのは2月10日の衆院予算委員会で元検察官でもある山尾志桜里氏(立憲民主)が示した1981年の衆院内閣委員会の議事録だ。
 定年制が盛り込まれた国家公務員法改正案を議論した際、人事院幹部が「検察官と大学教員は既に定年が定められ、今回の定年制は適用されないことになっている」と答弁していたのである。「違法だ。議事録をちゃんと読んだのか」と追及された森雅子法相は「詳細を存じ上げていない」と答えざるを得なかった。
 この時点で政府の主張は完全に破綻したと言っていい。検察官には国家公務員法の定年制が適用されないのだから、勤務延長そのものが違法な措置ということになる。
 その中で13日の衆院本会議で、安倍晋三首相が法解釈を変更したことを明らかにした。立法の趣旨を無視し、解釈を勝手に変えるのは法治主義を破壊する暴挙である。
 不自然なのは人事院給与局長の態度だ。12日の予算委で「現在まで特に(検察官の定年を巡る)議論はなく、同じ解釈が続いている」と答えたが、19日になって撤回した。
 法務省は黒川検事長の定年延長を巡る法解釈変更の経緯を示す文書を予算委理事会に提出するが、日付がなかった。
 森法相は「部内で必要な決裁を取っている」と述べたものの、法務省と人事院は正式な決裁を取っていないと説明した。その揚げ句、「口頭による決裁を経た」と法務省が発表し整合性を取った。起案した時期は不明のままだ。
 定年延長が検察官に適用されないとする議事録を知らないと答えていた森法相は、首相の解釈変更表明後、過去の政府見解を「認識していた」と主張した。そうであれば、なぜ最初から解釈を変えたと言わなかったのか。政府ぐるみで後付けの釈明を繰り返していると考えた方が自然だ。
 違法、脱法の解釈変更や不誠実な答弁は立法府である国会を愚弄(ぐろう)し、三権分立をないがしろにする行為である。
 これまでの国会審議を通して色濃く浮かび上がったのはつじつま合わせに腐心する閣僚や官僚の姿だ。中でも、法秩序の維持を任務とする法務省が法を軽んじている現状は極めて深刻である。



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