新型コロナウイルスによる肺炎(COVID19)の感染拡大で経済活動が停滞し、県経済への影響が日を追うごとに深刻化している。沖縄観光コンベンションビューローは3~5月の観光客が前年同期に比べて152万人減少し、観光消費額で1024億円の落ち込みになると試算した。
現時点でも観光産業は深刻な被害を受けており、沖縄観光のピークである夏場まで影響が長引くようであれば、経済全体への打撃は甚大だ。
だが、焦りは禁物だ。感染が収まらなければ観光をはじめ経済活動が正常に戻ることは難しい。各企業や消費者が感染防止を徹底する意識を共有し、感染を拡大させず、県民一丸で一刻も早い事態の終息を図ることだ。
一方で経営資源を削りながら感染防止に取り組んでいる企業が、終息を待たずに力尽きては元も子もない。雇用の支援をはじめ、行政はあらゆる手だてを講じて県内企業を支えることが必要になる。
人の動きが止まって売り上げが激減しているのは観光ばかりではない。イベントや公演の中止も相次ぎ、小売業や飲食業などで売り上げ機会の損失が生じている。
バスやタクシーの運輸業界の経営も直撃している。沖縄都市モノレールの2月の1日平均乗客数は前年同月比5・0%減の5万2077人だった。昨年10月の浦添延長で4駅が増えたにもかかわらず減少となったのは観光客の利用減に加え、感染予防で公共交通の利用を控える県民の意識もあるだろう。
外部環境がこれだけ急激に変化すると、個別の企業の経営努力だけで事態を改善できるものではない。県内旅行業大手の沖縄ツーリストは社員570人のうち最大250人を当面休業させる形で雇用を継続し、危機的状況を乗り切る対応を図っている。
従業員を自宅待機させるなどして我慢を続ける経営者は、経済活動の自粛がいつまで続くのか不安を抱えている。資本力の小さい中小・零細企業では、売り上げが入らずに資金繰りや雇用の継続が困難になるケースが続出してもおかしくはない。
臨時休校やイベントの自粛を求めた安倍晋三首相には、休校の根拠と今後の道筋をきちんと説明し、経済の混乱を解消するための対策を講じる責任がある。
いったん人員を削減してしまうと、終息後に従業員が必要になったときに観光業界に人が戻ってこない事態が想定される。労働者の失業や収入減は、感染症が終息しても消費が回復せず、景気を冷え込ませる要因にもなる。
沖縄労働局は休業中の賃金を助成する雇用調整助成金の対象を拡大して、雇用継続のための相談を企業から受け付けている。新たな助成制度の創設なども含め、官民が連携して経済への影響を最小限にとどめ、全力で雇用を守ることが大切だ。