<社説>首里城火災原因不明 管理責任の問題消えない


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 多くの県民に衝撃と悲しみをもたらした火災から4カ月余り。はっきりとした原因は分からぬまま「迷宮入り」してしまうのだろうか。

 昨年10月に発生した那覇市の首里城の火災について、市消防局は「原因の特定は難しく、出火原因は不明とする」と発表した。焼損が激しいため物証が見つからず、調査を終了したという。
 沖縄県警も1月末、出火原因を特定できずに捜査を終え、放火などの事件性はないと発表している。原因不明のまま全て調査が終了したことになる。あのような大火災を繰り返さないためにも原因の科学的究明が欠かせないだけに、今後に課題を残した。
 ただ市消防局は、出火元とみられる正殿1階北東側の延長コードなどが原因となった可能性が高いと指摘した。延長コードは分電盤と発光ダイオード(LED)の照明器具をつなぎ、通電していた。
 原因について市消防局は火災の約1週間後には、「正殿の電気系統が濃厚」との見解を示していた。延長コードの電源プラグの周囲にほこりや水分が付着して発火する「トラッキング現象」や、何らかの原因による断線で出火した可能性があるという。
 延長コードとみられる配線類は県警科学捜査研究所で鑑定し、正殿北側で見つかった配線などの金属類約51キロは消防庁消防研究センターで調べたが、原因判定には至らなかった。残念である。
 消防の調査は51日間、延べ657人に上った。関係機関の労に敬意を表し、最終的な火災調査書を待ちたい。
 火災の原因が特定できないからといって、管理責任の問題が消えるわけではもちろんない。出火時の警備員らの初動対応も問題視されている。
 正殿には自動火災報知設備があったが、警報に気付いた警備員は仮眠中の同僚を起こさずに確認に向かい、ルールに反してモニターの常時監視をしていない時間帯があったことが判明している。警備員が出火直後に機器で火元を確認していないことも原因特定に至らなかった一因という。
 管理体制のほか、延焼を止められなかった防火対策にも多くの課題があったことが既に明らかになっている。
 文化財保護法などに基づく防火対策は義務付けられていなかったとはいえ、正殿は木造でありながらスプリンクラーはなく、1階には煙感知器も設置されていなかった。指定管理者として実際の業務を担う沖縄美ら島財団は、夜間を想定した防火訓練などを行っていなかった。
 出火原因の特定に至らなかったことについて、玉城デニー知事は「管理者としての責任は重く受け止めている」との談話を出した。
 首里城再建に向けては政府が積極的に関与して議論が進んでいるが、防火や管理体制の十分な検証がその前提である。再発防止に向けた議論も加速させるべきだ。