<社説>PFAS汚染未調査 国の無策と怠慢目に余る


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 沖縄防衛局は自らの怠慢をどう説明するのか。

 米軍嘉手納基地周辺の浄水場や河川で高濃度の有機フッ素化合物(PFAS)が検出されている問題を巡り、防衛局は2019年内に予定していた水質調査を実施していなかった。
 防衛局は18、19年度に米軍基地内への立ち入りを米軍から拒否されたためだとしているが、基地外での水質調査も17年度に行っただけだ。
 県がPFASの検出を発表してから4年、防衛局は一度も基地内での調査ができず、基地外でも予定の調査を行わず、20年度以降は調査費の予算を計上すらしていない。県民が直接口にする水の汚染に対して、状況を把握する気もないようだ。
 水道水の水源でもある比謝川などから、国内では輸入や使用が原則禁止されている有機フッ素化合物が検出されたのは16年だ。
 いくつか種類があるが、航空機燃料や洗浄剤などに含まれる。環境中で分解されにくく、蓄積性がある。健康へのリスクが指摘されており、発がん性や発達障がいなどの危険があるとされる。国内ではいまだに規制基準が定まっていないが、国際条約で製造、使用、輸出入も制限されている。
 県の調査では嘉手納基地の排水が流入した後、濃度が大きく跳ね上がっており、発生源は嘉手納基地の可能性が高いと見ているが、調査ができず、流出防止の策も打てない。
 そもそも米軍基地内の環境汚染に対して、日本の法律はお粗末極まりない。
 在日米軍は準拠すべき基準として日本環境管理基準(JEGS)を設けている。JEGSは米環境法、日本環境法と一致した基準の達成を目標として掲げているが、あくまで米軍の内部規定であり、被害が生じてもJEGSを根拠として訴訟をすることなどは難しい。
 日米地位協定によって在日米軍基地内は事実上、治外法権の状態にある。汚染があっても米軍が許可しない限り立ち入り調査ができず、現実には日本政府や自治体、周辺住民の監視の目が届かない。
 防衛施設周辺の生活環境の整備に関する法も騒音被害などが対象で土壌や水質の汚染には対応しない。
 県民の安全に関わる水質汚染について防衛局は、米軍とどのような交渉をしているのか公表すべきだが、県にも具体的な回答をしていない。米軍と地元とを仲介するという防衛局の役割は破綻していると言っていい。
 同じように米国と地位協定を結ぶドイツでは、ドイツ側の判断で立ち入り調査が可能だ。これに対し在日米軍基地はブラックボックスだ。
 日米地位協定を改定して立ち入り調査などを可能にし、国内の環境基準を米軍にも適用することが必要だ。国の無策と怠慢は目に余る。ブラックボックスを放置してはならない。