<社説>警戒を怠ってはならない コロナ県内4人目


社会
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 県内在住者で4人目となる新型コロナウイルスの感染が確認された。パンデミック(世界的大流行)となっているウイルスは今後も沖縄にいつどこから侵入するか分からない。この状況が当面続くことをまず理解する必要がある。

 県によると、スペイン旅行から20日に帰国した沖縄本島中部在住の10代女性が新型コロナウイルスに感染した。成田空港検疫所で検査を受けたが、無症状だった。
 女性は学校の休校期間中に家族・親戚ら計6人で13日からスペインを訪れた。成田では検査結果が出るまで空港で待機するよう要請されたが、結果が出る前に羽田空港経由で那覇に移動し、自家用車で帰宅した。女性以外の5人の検査結果は陰性だった。
 記者会見した県の砂川靖保健医療部長は「保健衛生を所管する立場からすると待機要請に応じてほしかった」と述べた。家族らには沖縄への乗り継ぎのため移動を急ぐ事情などがあったのだろうか。
 待機要請に強制力はない。政府は水際対策の実効性を担保するためにも、待機によって不利益を被る人たちに何らかの便宜を図ることなども積極的に検討すべきだろう。一方で渡航者にはより慎重な行動が求められる。
 県内では2月20日に3人目の新型コロナウイルス感染者が判明して以降、1カ月感染の確認がなく、3人とも回復し入院勧告は解除されていた。今回は成田空港の検疫で感染が判明したため沖縄での発生には含まれないという。
 女性は帰宅して以降は、外出していないという。県は、家族・親戚のほか那覇行きの機内で前列に座っていた2人の計9人を濃厚接触者として健康観察をする方針だ。
 県は今月13日、県主催のイベントなどを感染防止対策のため原則中止、延期するとした方針を一部見直し、必要な対策を十分講じることを条件に開催すると表明した。
 新型コロナは県民生活や経済に深刻な打撃を与えている。今回の感染確認の影響を当然見極める必要があるが、県内の状況を正しく理解し徹底した防疫・予防対策を講じた上で人々の活動を戻していく努力は続けるべきだ。
 世界各地で感染拡大に歯止めがかからず、国内でも都市部を中心に経路の分からない感染者が増加している。政府の専門家会議は19日、感染が確認されていない地域での学校活動などに理解を示す一方、欧州で起きているようなオーバーシュート(爆発的患者急増)に懸念を示した。
 国民への的確で迅速な情報提供、緊急医療態勢の早急な整備、集団感染源の把握と封じ込めなど政府と関係機関が力を結集すべき課題は多いが、まずはそれぞれで予防や健康管理に留意することだ。
 手洗いやアルコール消毒を徹底し、人混みや換気の悪い密閉空間、近距離での会話を避ける―。一人一人がこれまで以上に警戒を強めたい。