<社説>那覇空港滑走路増設 世界の懸け橋へ飛躍を


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 那覇空港第2滑走路の運用が26日から始まる。

 沖縄の発展の可能性が広がった出発の日だが、新型コロナウイルス感染症の拡大に伴い、世界的に航空網が縮小する厳しい情勢で迎えることになるとは予想もしなかった。
 しかし、各国の渡航・入国制限は感染症の拡大を食い止めるための一時的な措置であり、国境を越えた人や企業の動きが活発化する流れが止まることはない。感染症の流行が終息すれば世界の航空需要は必ず持ち直す。
 那覇空港の許容量が拡大して需要の回復期を迎えることを前向きに捉え、終息後を見据えた準備に取り組みたい。
 離島県の沖縄にとって、空港は代替の利かない重要な社会インフラだ。産業が成長する可能性は、人や物を受け入れる空港の規模に比例すると言っていい。自立型経済を目指す上で、那覇空港の滑走路増設は経済界を中心とした長年の悲願だった。
 飛行機が人々の移動の主役となるにつれて沖縄の経済も拡大してきた。那覇空港は離島の島々の結節点となり、県民生活を支えてきた。さらに国内屈指の観光地として多くの観光客を迎え入れ、成長著しいアジアに開かれた玄関口としてビジネスチャンスを広げている。
 那覇空港から飛行機で4時間以内で到達する円内に、東アジアの主要都市がすっぽりと入る。もはや南海の孤島ではない。日本1億人、中国13億人、東南アジア諸国連合(ASEAN)6億人という、人口約20億人の巨大市場の中心に位置する地理的優位性を発揮する時代だ。
 航空機が安定的に遅延なく発着できる回数である「処理容量」は、現在の那覇空港だと年間13・5万回だ。2018年度の発着回数は16・4万回と容量を超過し、便の遅延が慢性化してきた。
 滑走路が2本になることで年間の処理容量は24万回に拡大し、遅延による経済的損失が解消される。発着便数を拡大する余力が生まれ、19年に入域客1千万人の大台を達成した沖縄観光をさらに引き上げて経済の起爆剤となる。
 滑走路増設の意義は産業面ばかりではない。現状は滑走路上でトラブルが生じると空港自体が閉鎖され、130万人が暮らす沖縄本島の出入りが止まる危機管理上のぜい弱性を抱えてきた。
 14年1月の滑走路増設工事の着手から6年余。複数の滑走路を備えることで空港閉鎖のリスクは低減する。
 空港のポテンシャルを最大限に高めるために、欧州直行便の開設など、県を挙げたトップセールスで新規路線を誘致することは重要だ。旅客の増加に対応した受け入れ体制の強化でも、空港に接続する交通機関の利便性向上など取り組むべき課題は多い。
 現在の危機を乗り越え、沖縄が世界の懸け橋となる万国津梁時代に向けて一層の飛躍を目指したい。