<社説>米軍慶良間上陸75年 原点立ち返り平和築こう

 県民の貴い生命や財産を奪った悲惨な体験を忘れず、後世に語り継がなければならない。戦争につながる一切を否定しなければならない。沖縄の平和を求め、これらの誓いを新たにしたい。75年前の3月末、日米で20万人余が命を落とした沖縄戦が始まった。

 1945年3月26日、米軍は座間味村に、27日には渡嘉敷村に上陸し、両村の島々を制圧した。米軍の砲撃と日本軍の強制・誘導によって住民500人余が「集団自決」(強制集団死)に追い込まれた。沖縄戦最大の悲劇が沖縄戦の緒戦で起きたのである。
 「本土決戦」への時間稼ぎのため沖縄に多大な犠牲を強いた「戦略持久戦」という日本軍の作戦方針と合わせ、県民は沖縄戦の悲劇から「軍隊は住民を守らない」という教訓を得た。さらには軍隊は住民と敵対する存在になることを多くの体験から学んだ。
 平和を求める県民の歩みの根本には、この教訓がある。それを否定しようという動きがあったことを見逃すわけにいかない。2006年度教科書検定で「集団自決」における日本軍の「強制・関与」をあいまいにする検定意見が付き、記述がゆがめられたのである。
 県民の抗議行動で一定の記述の回復を見た。しかし、今日に至るまで検定意見は撤回されていない。教科書検定のたびに、私たちは沖縄戦に関する記述を注視してきた。
 文部科学省は24日、21年度から中学校で使用する教科書の検定結果を公表した。歴史教科書の検定を合格した7社中6社が「集団自決」を取り上げたが、強制性の明記を避けたことは残念だ。一方、特集ページを設け、沖縄戦を詳述した教科書もある。これらの取り組みを評価するとともに、記述の歪曲(わいきょく)が起きないよう引き続き注視したい。
 先島の陸上自衛隊配備の動向も沖縄戦の教訓に反するものとして厳しい目を向けなければならない。
 宮古島市では市民の反対をよそに地対艦ミサイル発射台を搭載した車両が駐屯地に搬入された。石垣市では市民が求める陸自配備の賛否を問う住民投票を実施しないまま、市議会が沖縄防衛局への市有地売却議案を賛成多数で可決した。いずれも民意を踏まえた計画ではない。
 沖縄戦前年の日本軍配備は学校など公共施設、個人の土地や家屋の強制的な徴用を伴った。さらに、県民の根こそぎ動員によって日本軍陣地や飛行場が建設された。県や市町村行政が戦時行政の性格を帯びていった。
 日本軍駐屯が沖縄戦の悲劇へとつながった。この経験も踏まえ、私たちは宮古、石垣の陸自配備の是非を判断する必要がある。
 沖縄の現状を見つめ、進むべき将来を定めるため、私たちは幾度でも、戦後沖縄の原点である沖縄戦体験に立ち返らなければならない。
 そのことが沖縄の平和な未来を築く。



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