<社説>コロナによる経済損失 県は大胆な雇用対策を


社会
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 新型コロナウイルス感染症の拡大が県経済を直撃した。県は入域観光客減少に伴い、経済損失が1867億6200万円に上るという試算を発表した。主力産業の観光が大きな打撃を受け、それがさまざまな産業に波及している。2001年の米中枢同時テロや、リーマン・ショック後の経済の落ち込みを大きく上回る緊急事態だ。

 県は国の施策を待つだけでなく、独自の大胆な企業支援策を実施して、何よりも雇用を守らなければならない。県は雇用調整助成金の上乗せを打ち出したが、ほかにも中小企業向け融資枠の拡大や家賃など固定費への補助、失業者への生活支援など取るべき策は多い。速やかに補正予算を編成して取り組むべきだ。
 試算は2~5月の観光客数が前年同期と比べ半減し、実数で167万1405人減少すると推計した。1人当たりの消費額を掛け、直接効果に当たる観光消費の減少額を1166億8千万円と計算した。18年度の観光収入が7340億5600万円だから約16%が失われることになる。
 観光業の落ち込みは他産業にも波及する。宿泊業や飲食店、旅行業を含む「対個人サービス」の損失が716億100万円と最も大きいが、土産品販売店などを含む「商業」が397億7200万円、「運輸・郵便」が191億700万円などと試算され、影響が広がることが予想される。
 国のGDPに相当する付加価値誘発効果は1021億6800万円の損失になると試算した。16年度の県内総生産4兆2819億6300万円の2・38%に当たる。
 沖縄県の入域観光客は復帰後、おおむね右肩上がりに推移してきたが、大きな落ち込みが過去2回あった。米中枢同時テロの際は米軍基地があるために沖縄は危ないという風評により修学旅行がキャンセルされた。09年度は前年のリーマン・ショックや新型インフルエンザの流行で観光全体が落ち込んだ。そのたびに行政や経済団体が県外への観光誘致活動などをしてきた。
 しかし今回はウイルスという見えない脅威に向かって、人為的に経済活動を抑えなければならない局面だ。
 県内の失業率はここ数年で大きく改善したが、非正規雇用の割合は全国一で、いまも脆弱(ぜいじゃく)な雇用環境にある。県は、無担保低金利の「セーフティネット資金」の融資枠480億円のさらなる拡大や返済の猶予、休業補償、働き手の所得補償を徹底する必要がある。
 さらに新たな施策としてリモートワークを進める企業への設備補助やデジタル化の推進など感染防止と経済活動の両立を図った対策を打ち出してほしい。
 先の見通せない状況だからこそ経済、雇用の基盤を壊してはならない。打撃を最小限に食い止めるため県民を挙げて感染の拡大防止に取り組みたい。