<社説>コロナ県内最多感染 病床や検査の拡充早急に


社会
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 新型コロナウイルス感染が沖縄県内でも流行する恐れが出ている。

 県は4日、新たに5人の新型コロナウイルス感染が確認されたと発表した。1日の確認数ではこれまでで最多だ。うち2人は感染経路が不明な「市中感染」の可能性がある。玉城デニー知事が言うように、県内感染状況の「フェーズ(局面)が変わった」と言える。厳重な警戒が必要だ。
 5人が住む地域や世代、職業などはばらばらで、これまでに感染が判明した県内の11人との濃厚接触も確認されていない。県立中部病院感染症内科の椎木創一医師は経路不明な感染の確認について「沖縄に入り込むウイルスが増えてきているのは間違いない」と警鐘を鳴らした。
 5人は3月25日以降に発症している。椎木氏らが指摘するように、その1週間から10日ほど前には沖縄で感染が広がり始めた可能性がある。
 県内では2月20日に3人目の感染が判明してから1カ月間、感染が確認されない時期があった。この間、3月13日に県は主催イベントなどの原則中止・延期方針を緩和し、必要な対策を十分講ずることを条件に一部実施するとの方針を示していた。
 県のイベント再開方針は経済や生活面への影響も考慮したものだが、警戒が少し緩むことはなかったか。一方、新型コロナの世界的大流行で海外渡航が難しくなった全国の学生らが春休みの旅行先を沖縄に変更し、多数来県していたことなどへの懸念も3月中旬ごろから出ていた。
 5人の感染確認を受け、県は主催イベントなどを原則中止、延期するとの方針に戻した。当然の措置だ。県は、県外や海外で感染し県内で判明する「移入例」が相次いだことで3月26日からは県外旅行の自粛を呼び掛けている。これまでの対応と感染事例を丁寧に検証し、今後に生かさなければならない。
 喫緊の課題は、感染者の急増に備えた県内での病床数の確保と検査態勢の拡充だ。
 県内の指定医療機関の感染症病床数は計24床にとどまる。協力医療機関と合わせて40床は確保できるというが、もし患者が急増した場合はとても十分ではない。県は国の通知を受けて軽症者や症状のない感染者が療養する施設やホテルなどの調査に入ったが、国も県も遅すぎないか。
 感染の有無を調べるPCR検査の拡充も急務だ。県内では現在、1日最大38件可能だが、民間の協力を得て80件に増やすという。保健所や病院などへの支援を強化しつつ早期に拡充してほしい。
 新型コロナウイルスの感染は国内でも大都市圏を中心に急拡大している。最も重要なことは一人一人が警戒レベルをさらに引き上げることだ。手洗いやアルコール消毒を徹底し、密閉空間、密集場所、密接会話の「3密」を避け、免疫力を落とさないよう体調管理に万全を期したい。