<社説>コロナ緊急事態宣言 危機感共有し感染防止を


社会
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 新型コロナウイルス特措法に基づき、安倍晋三首相が7日にも緊急事態宣言を発令する。8日から効力が発出する。

 私権の制限を伴う措置を可能にする「伝家の宝刀」だが、発令もやむを得ない。ウイルスの脅威が国民一人一人にひたひたと押し寄せてきているからだ。危機意識を共有し、感染拡大の防止に努めなければならない。
 宣言は専門家らの諮問委員会の意見を踏まえて出される。都道府県単位の区域や期間を明示することになっており、首相は東京、神奈川、埼玉、千葉、大阪、兵庫、福岡の7都府県が対象地域だと説明した。期間は5月6日までだ。
 対象となる地域の知事は、社会機能や医療の崩壊を防ぐため、不要不急の外出の自粛を要請したり、映画館、大型店舗などの使用停止を要請・指示したりできる。医薬品などの強制収用も可能になる。
 住民は、通勤、通院、食品や医薬品の買い出しなどを除いて、外出を自粛するよう求められることになる。それに対する罰則はない。
 国内の感染者は6日、クルーズ船乗船者らを除き累計で4千人を超えた。東京都では同日新たに確認されたうちの約9割が経路不明だった。
 症状があって病院を訪れてもPCR検査にたどり着かないケースや、感染していても無症状なケースもあることから、実態は数十倍に上る可能性さえある。
 緊急事態宣言が出る前に、既に相当深刻な状況に陥っていたと言える。政府から要請されるまでもなく、一人一人が取り得る予防策を講じることが大切だ。自身や周りの人たちを守るために、密閉空間、密集場所、密接会話の「3密」を避ける必要がある。
 沖縄県内も感染者が増え続けている。患者を受け入れる「感染症指定医療機関」の感染症病床数は、県立北部病院2、県立中部病院4、県立南部医療センター・こども医療センター、琉球大病院各6、県立宮古病院、県立八重山病院各3の計24床だ。
 県は、協力医療機関と合わせて計40床を確保できるとの見通しを示しているが、罹患(りかん)者の数が地域の対応能力を超える恐れがある。
 県の新型コロナウイルス感染症対策専門家会議では、県外の人々に対して沖縄への来県を2週間程度自粛するよう求めるべきだとの意見が相次いだ。これを受けて県は6日、業界団体との調整に入った。石垣市などは観光客らに来島自粛を呼び掛けた。
 県内の感染例の多くは県外からの「移入例」だ。訪れる人が減ればその分、リスクが減る。一時的には観光産業への打撃が拡大するが、長期的な視点で捉える必要がある。命には代えられない。
 緊急事態宣言を待つまでもなく、感染爆発を回避するために取り得る手だては全て講じるべきだ。医療崩壊は何としても食い止めなければならない。