<社説>政府の基地立ち入り とても調査とは言えない


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 発がん性が指摘される有機フッ素化合物PFOSを含む泡消火剤が米軍普天間飛行場から流出した問題で、政府は16日に普天間飛行場で「立ち入り調査」をしたと発表した。しかし、実態は米軍の説明を受けながらの現場確認にとどまり、日米合意にも規定がある土壌や水などのサンプル採取はしなかった。

 これでは「調査」とは言えない。環境汚染が発生した以上、その程度や原因を基地の内外で調べるのは一国の環境行政として当たり前だ。当然ながら地元自治体と共同での確認も必要となる。だが、県や宜野湾市が沖縄防衛局を通じて米軍に立ち入り調査を求めていたにもかかわらず、政府は立ち入りの事実を地元に連絡していなかった。
 防衛省は日米間の環境補足協定に基づき、漏出箇所や流出した可能性のある場所の土壌や水などのサンプルを採取して調査し、環境浄化策を講じなければならない。
 16日の立ち入りは環境補足協定に基づき防衛、外務、環境の3省が合同で行った。2015年の協定締結後、環境汚染事故での基地立ち入りは初めてとなる。
 県、市に連絡もせず政府だけで立ち入ったのは、地元を軽視する防衛省の姿勢の表れと言えよう。河野太郎防衛相は「伝わっていなかったのはわれわれのミス」と釈明したが、本当に単なるミスなのか。国への不信感は拭い難い。
 普天間飛行場からは19年12月にもPFOSの漏出事故が起きた。しかし、その際、防衛省は立ち入り調査をしていない。事故現場の正確な場所や漏出量も把握せず、米軍からの情報を根拠に「基地外への流出や環境への影響はない」と説明しただけだ。こうした日本側の無策が事故の再発を招いた。
 PFOSは発がん性など健康被害のリスクが指摘されている。加えて環境中でほとんど分解しないため高い残留性や生物への蓄積が問題となり、国際条約で製造・使用が制限されている。
 在沖米軍基地周辺ではPFOSが高い値で検出されている。県の19年夏季の検査では嘉手納基地や普天間飛行場周辺で、米環境保護庁(EPA)が設定した水道水の生涯健康勧告値を大幅に超えた。
 普天間周辺では9地点のうち5地点でPFOSと、同じく有害性が指摘される有機フッ素化合物PFOAの合計値が米EPAの勧告値(1リットル当たり70ナノグラム)を超え、100~1300ナノグラムが検出されている。
 これは基地内の調査をせず、汚染を野放しにしている日本政府の怠慢だ。
 防衛省は基地内でのサンプル採取について「米側と調整する」という姿勢だが、調査を強く米側に求めるべきだ。早急に県、市と共に立ち入り、土壌、水質を調べ、原因究明と浄化対策、さらに汚染物質を含む資材の使用禁止につなげなければならない。