嘉手納基地内の川などから2018年8月時点でPFOSなどの有機フッ素化合物が高濃度で検出されていたことが明らかになった。こうした有害物質を漫然と保管し続けているのなら、周辺住民に対する背信的不作為にほかならない。有害物質は直ちに撤去すべきだ。
嘉手納基地の川などから採取した水のサンプルからは、PFOAとPFOSの合計で1リットル当たり3万8千ナノグラム(ナノは10億分の1)が検出された。日本の暫定目標値(同50ナノグラム)の760倍だ。
有機フッ素化合物は、PFOAやPFOSなど多数の種類がある。化学的に安定し、水や油をはじく性質があることから、身近なものでは調理器具などに使われてきた。しかし環境中ではほとんど分解されないため「永遠の化学物質」とも呼ばれる。人や動物の体内に蓄積するため、発がん性に加え、出生時の体重に影響が生じる可能性も指摘されている。
PFOSは09年に国際条約で製造・使用が原則、禁止された。国内でも原則として製造・輸入・使用が禁じられている。嘉手納基地の調査は共同通信が米国の情報公開制度で入手し判明した。しかし公開された資料でも詳しい検出場所は不明だ。
水のサンプルの一つがポンプから出る水だったことをうかがわせる記述があるが、具体的な由来は記されていないという。「川」と記された別のサンプルは、暫定目標値の10倍強となる1リットル当たり約570ナノグラムが含まれていた。
嘉手納基地周辺では河川や湧き水、水道用の取水施設で有機フッ素化合物が確認されてきた。16年1月に県企業局が水質調査の結果を公表し、その有害性も表面化した。嘉手納基地内を通る大工廻川や周辺の比謝川で、高濃度に検出された。
県民が脅威を感じていることを米軍は承知のはずだ。18年の時点で高濃度の検出が内部で報告されているのに地元には何ら告知していない。全く信の置けない「隣人」だ。
普天間飛行場では19年末にも人為的な事故で有機フッ素化合物を含む泡消火剤が流出していたが、米軍は公表していなかった。地域住民を危険にさらしたばかりか、頰かむりしている。許し難い背信性である。
厚生労働省は4月にPFOSなど有機フッ素化合物の濃度に関する暫定目標値を設定した。これを受け県企業局は5月に北谷浄水場の水源汚染の原因になっている可能性があるとして嘉手納基地への立ち入り調査を申請した。
県が16年に調査を申請した際、米軍はPFOSに関する水質基準が日本国内にないことなどを理由に拒否した。基準値が定まった以上は、当然認めるべきだ。
米軍側からいまだに返答がないのはどういうわけか。日本側が主導権を握り、立ち入り調査を実現させるべきだ。