<社説>差別表現に違法判決 憎悪を放置しない社会に

 在日韓国人の50代女性が、職場で侮辱表現にさらされたとして損害賠償を求めた裁判で、大阪地裁堺支部は「ヘイトハラスメント(憎悪による嫌がらせ)」を認定した。

 原告の女性が間接的にせよ、差別的扱いを受けるのではとの危機感や心の痛みを裁判所がくみ取ったのは評価できよう。憎悪による嫌がらせは周辺も深く傷つける。判決は、そのことを広く警告する社会共有の戒めでもある。これを機に差別と憎悪表現の根絶に向けた歩みを進めたい。
 判決などによると、2013年ごろから社内で業務とは無関係に、中国や韓国の国籍や出自を有する人に対して「死ねよ」「うそつき」「卑劣」などと侮辱する文書などが配布された。
 裁判所は、資料配布が原告個人に向けられた差別的言動とはいえないとする一方、「労働者の国籍によって差別的扱いを受けないという人格的利益を侵害するおそれがあり違法だ」と判断し、計110万円の支払いを命じた。
 差別を漫然と放置すれば、ひいては組織や社会が病み、荒廃させかねないとの指摘も判決からは読み取れよう。憎悪表現が、国というエリアから県単位や地域などに狭められることもある。コロナ禍にあって他都道府県ナンバーの車両に嫌がらせもあった。ひとごとでは済まないのだ。
 5日投開票された東京都知事選でも問題が浮上した。立候補者が「選挙運動の自由」に乗じて演説などで人種差別発言をする「選挙ヘイト」だ。
 候補者の1人は中国大使館前で中国の蔑称「支那」を連呼、侮辱的発言を繰り返した末、矛先を玉城デニー県知事に向け「支那の工作員」とも発言した。都選管は「ヘイトかどうかを判断するのは都条例に基づく審査会。都独自で封殺はできない」として対応には踏み込まなかった。
 政治的批判なのか否か、微妙な表現もある。憲法21条の表現の自由が精神的自由権であり、最も尊ばれるべきなのは言うまでもない。例外なき表現の自由という大原則の変更につながってはいけない。
 しかし真実でもなく、公益性もない。著しく回復困難な損害が生じるような表現までも無制約ではないだろう。
 親や生地を選ぶことはできない。自らの意思や努力ではどうすることもできないのが国籍や出自である。憲法14条は、法の下の平等を定め、人種や性別、社会的身分などで差別されないと規定する。
 神奈川県川崎市は今月から差別禁止条例を全面施行した。刑事罰を初めて盛り込み、人種や国籍などによる差別の解消を市の責務と位置付けた。条例の運用で過度な制約は生じてないか、実効性はどうか。検証を重ねた課題は他自治体も共有すべきだろう。
 県内でも差別、排外的な動きが散見される。差別に基づく憎悪表現をどう封じ込めるか。一人一人が、社会が不断に問い掛けなければならない。



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