<社説>低い子どもの幸福感 多様な価値観育む社会を

 物は豊かになったが、心は貧しくなった―。戦中・戦後を生き抜いた世代からよく聞く言葉である。子ども社会ではそれが顕著に表れるように思える。

 国連児童基金(ユニセフ)が先進・新興国38カ国に住む子どもの幸福度を調査した結果、日本は37位と最低レベルだった。「身体的健康」では1位で、経済的にも比較的恵まれているが、生活満足度は低く自殺率が高いため「精神的な幸福度」が低いことが順位を押し下げた。
 子どものありようは大人社会の鏡だ。生きがいを感じ、自殺に追い込まない人間関係や多様な価値観を育む寛容な社会の実現が求められている。
 教育評論家の尾木直樹氏は、日本の学校現場を「いじめ地獄」と表現する。偏差値偏重による受験競争過熱も相まって「子どもの自己肯定感が低く、幸福感が育たないのは必然的だ」と指摘した。
 まずは偏差値ばかりを重視する価値観を変える必要がある。スポーツや文化、地域の活動など多様な分野で評価され、やりがいを実感できる機会を増やすことが自己肯定感を高める。“チャンピオンベルト”は多い方がいい。
 同時に弱者や他者を思いやる心を育むことも重要だ。そんな寛容の精神が多様性を尊重することにつながる。
 日本全体の幸福度世界ランキングも子どもたちと似た傾向を示している。国連の2020年版世界幸福度報告書によると、日本は一昨年の54位、昨年の58位からさらに後退し、62位だった。日本は自身の人生評価について、楽しいか、つらいかという主観の満足度や寛容さで著しく低かった。
 自己肯定感と寛容さは大人社会でも問われている。多感な子どもたちへの影響を考えると、大人社会から変えていく必要がある。例えば女性の社会進出は多様性を認める社会の実現に向け重要である。男性の育児参加など、子どもを産み育てやすくする環境づくりはセットの課題だ。
 働き方改革やライフスタイルの見直しも肝要だ。大人がストレスにさいなまれていては、いじめなどで悩み苦しむ子どもたちの心の叫びは捉えにくい。子ども目線で対話し、信頼を醸成する上でもストレス社会は変えねばならない。
 「世界一幸福な国」と呼ばれ、先の報告書でも2位だったデンマークへの留学経験者は「『大人は自分たちの声に応えてくれる』という絶大な信頼感を持っていると感じた」と語っている。
 コロナ禍による生活苦や人間関係の希薄化で無力感や孤立感が深まり、不寛容な精神がはびこれば、子どもたちに一層深刻な影響を与えることにも留意すべきだ。
 子どもは社会の未来を担う大切な存在だ。多様な価値観を認める社会へ大人たちが率先して取り組み、背中を見せる必要がある。子どもたちは大人の態度をしっかり見て鋭敏に感じている。



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