<社説>菅首相初の所信表明 言行不一致から改めよ

 沖縄県民の願いや国民の疑念に応えず美辞麗句を並べるのは不誠実である。

 菅義偉首相は就任後初めて国会で所信を表明した。沖縄に関し「基地負担軽減に取り組む」とし「普天間飛行場の危険性を一日も早く除去するため、辺野古移設の工事を着実に進める」と述べた。その上で「引き続き、沖縄の皆さんの心に寄り添う」と語った。
 沖縄では辺野古埋め立てに投票者の約7割が反対した県民投票や知事選などの主な選挙で辺野古移設に反対する強固な民意が示されてきた。演説は言行不一致が甚だしい。言葉に責任を持つなら発言通り沖縄に寄り添うべきだ。
 辺野古海域では軟弱地盤が見つかり、国試算で9300億円の予算をかけ、12年以上の工期が見込まれる。この事実を軽視し「一日も早く」という言葉は空々しい。現行計画を即刻撤回し、県内移設の条件を付けずに普天間飛行場を早期に返還すべきである。
 菅首相は2016年の北部訓練場北側返還に言及し「本土復帰後最大の返還」と自賛した。しかし返還は、ヘリパッドの移設条件付きで高江集落周辺にオスプレイ仕様のヘリパッド六つを建設することが条件だ。明らかに機能強化である。建設が進む地元の住民は騒音に悩まされている。
 返還部分は米軍が「使用不可能」とした土地だ。にもかかわらず、すぐには返さず1996年の日米による返還合意から20年もの歳月を要した。県内移設条件付きだからだ。普天間飛行場や那覇軍港なども同様で、返還に時間がかかっている。県内移設条件付きの負担軽減は県民の願いとかけ離れている。
 真の負担軽減に誠実に向き合うなら、辺野古の新基地建設を直ちに断念し、県内移設の条件を付けない返還を進めるべきである。所信表明で沖縄県はじめ全国知事会が求めている日米地位協定の改定に触れなかったことも、沖縄に寄り添っていない証拠だ。
 不誠実な姿勢は沖縄の問題に限らない。日本学術会議の会員任命拒否問題も言及しなかった。国民に説明しない態度は、演説で述べた「国民のために働く内閣」と矛盾する。
 菅氏は2050年に国内の温室効果ガス排出を実質ゼロにする考えを示した。石炭火力を再生エネルギーに変えるだけでなく「安全最優先で」原発政策も進めるという。脱原発こそが国民の安全を確保する最善の道だ。東京電力福島第1原発事故後も原発政策を進めるのは国民の命を軽視していると言わざるを得ない。
 首相初の所信表明はここ30年間で政権交代時を除き、指名直後に実施されてきた。菅氏の表明は指名から40日後の異例の遅さだ。今回の所信表明は国会を軽んじ、国民をなおざりにする姿勢を鮮明にした。説明軽視もその一つだ。安倍政権時代に数々の疑惑を巡り隠し続けた公文書を開示するなど国民の疑念に応えなければ信頼は到底得られない。



関連するニュース







  • お知らせ


  • 琉球新報デジタルサービス



  • 会員制サービス






  • 他のサービス