バイデン米次期大統領は、大統領選で環境問題を重視する公約を掲げていた。
特に注目したいのは、発がん性などのリスクが指摘される有機フッ素化合物(PFAS)について、「有害物質」に指定し規制を強化すると明記している点だ。
PFASを巡り、在沖米軍基地周辺の汚染が2016年に表面化し、基地内を含む浄化を求める声が上がっている。バイデン氏が大統領に就任したら、在沖米軍の規制も強化するよう強く求める。
PFASは、自然環境中では、ほとんど分解されない。このため「永遠の化学物質」とも呼ばれ、人や動物の体内に長く残留する。発がん性のほか、出生時の体重に影響が生じる可能性が指摘される。中でも、毒性が強いなどのリスクがあるPFOSやPFOAは、基地内の消防訓練などに使われる泡消火剤に含まれている。
PFOSはストックホルム条約によって国際的に製造・使用が制限されている。国内では一部例外を除いて原則的に製造・使用が禁止されている。PFOAは昨年、日本も加盟する国際条約で今後、製造や使用を廃絶することを決定した。
国際的に規制されているにもかかわらず、18年に嘉手納基地の川などから採取した水のサンプルから、PFOAとPFOSの合計で1リットル当たり3万8千ナノグラム(ナノは10億分の1)が検出された。日本の暫定目標値(同50ナノグラム)の760倍だ。
19年12月に普天間飛行場の格納庫からPFOSを含む泡消火剤が流出している。今月4月にも普天間飛行場で22万7100リットルの泡消火剤流出事故が起き、その6割以上が基地外に流れ出た。
バイデン氏が規制を強化するのは、PFOSとPFOAになる見通しだと報道されている。
在日米軍による環境保全については、日本環境管理基準(JEGS)に従って日米の環境基準のうち厳格なものを選択することが定められている。PFOS・PFOAの基準は日本のほうが厳しい。しかし、米軍はJEGSの運用を公表しないため実態が分からない。
バイデン氏の公約によると、PFASの規制強化と原因者が汚染を除去する義務がより明確になる。在日米軍基地も米国内と同様に、規制強化と汚染した土壌は軍が除去すべきである。
しかし、在日米軍は日米地位協定で基地内の「排他的管理権」が認められているため、日本政府が口出しできない。
水源汚染は命にかかわる重大問題である。自治体の基地立ち入り調査や汚染の浄化を米側に義務付けるため、日本政府はバイデン新政権に働き掛け、不平等な地位協定の抜本的改定に取り組むべきだ。
玉城デニー知事も米軍によるPFAS被害の改善を日米に強く求めてもらいたい。