<社説>政治の女性差別 厚いガラス打ち破りたい


社会
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 この国のガラスの天井は厚い。政治を志す女性にはなおさらで、沖縄でも同様に覆(おお)いかぶさる。

 本紙が県議を対象にしたアンケートで、選挙活動中のセクハラや性差別、当選後の不当な扱いなどを訴える声が出た。さらに議会の望ましい男女比率については「ない」が半数以上となり、一定の数を女性に割り当てる「クオータ制」の賛同は多くなかった。
 県議会は定数48のうち女性は7人(14・6%)で過去最多タイとはいえ、政府の目標とする、指導的地位に占める女性の割合「30%」には遠く及ばない。県議の中で男女比率の目標値もなく、具体策も検討しないとすれば、そもそも女性議員を増やそうという意思は薄いと言わざるを得ない。
 2018年に国会と地方議会の議員選挙を対象に「政治分野における男女共同参画推進法」(候補者男女均等法)ができた。現在の県議は法施行後に選ばれた人たちだが、各政党とも候補者を男女同数にすることはなかった。
 日本は、男女格差を示す19年の「ジェンダー・ギャップ指数」で153カ国中121位と低位に甘んじている。経済、健康、教育、政治の4分野のうち日本の足を引っ張っているのは政治で、閣僚数で139位、国会議員数でも135位とかなり少なく、女性の政治参加は進んでいない。社会のリーダーシップを発揮すべき分野で、ダイバーシティ(多様性)が著しく低い状態がずっと続いている。
 政治の後進ぶりは女性の生き方にさまざまな影を落としている。政府が閣議決定した第5次男女共同参画基本計画には、選択的夫婦別姓の導入や女性登用の積極的な目標は盛り込まれなかった。
 明治時代に始まった「夫婦同氏制」は特に女性に姓の変更を強い、生活と仕事の支障になっている。夫婦別姓導入は自民党内でも要望が強かったにもかかわらず、党反対派の攻勢で頓挫した。女性の登用目標も03年の小泉政権時に打ち出されながら、またもや先送りされた。
 根底には「男は仕事、女は家庭」といった固定的な性別役割分業や旧来の単一的な家族観がある。県議アンケートでも結婚や子どもの有無で不当な扱いや違和感を抱いたという声が女性議員から出た。
 菅義偉首相は男女共同参画会議で20年代の早い時期に指導的役割の女性30%を達成するよう取り組むと述べた。しかし県議会自民会派は議会の望ましい男女比率の設定には消極的で、このままでは候補者の男女均等や議会での30%目標の達成はおぼつかない。
 今年は衆院選がある。女性候補を増やす各党の取り組みや実績を注視したい。女性が平等に扱われる社会であってはじめて、弱者や少数派も生きやすい多様性が尊重された社会になる。有権者も政治家も、厚いガラスを打ち破る意思が必要だ。