<社説>県緊急事態宣言延長 生活不安救済へ全力を


社会
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 玉城デニー知事は、新型コロナウイルス感染症の拡大を受けて発出していた県独自の緊急事態宣言を、28日まで延長することを決めた。引き続き不要不急の外出自粛を県民に求め、飲食店と遊興施設に対する営業時間短縮要請などが継続される。

 経済活動の自粛により、中小事業者は厳しい経営状態に置かれている。雇用状況も深刻さを増している。感染症から命を守ることと同時に、経営危機や生活不安の救済にも全力を挙げなくてはいけない。売り上げ減少企業への補償の拡充、困窮世帯への現金給付など、あらゆる手だてを講じる必要がある。
 財源は県だけでは限りがあり、国の制度支援が不可欠だ。新型コロナ特別措置法に基づく国の緊急事態宣言地域に沖縄県は指定されていないが、時短要請など独自に実施する感染対策は国の宣言地域と同様だ。財源の裏付けで不利になってはいけない。
 時短要請に応じた事業者に県が支払う1日4万円の協力金を、国の宣言地域と同じ6万円にするなど、政府は支援の拡充に動くべきだ。3兆8千億円程度が残っている予備費から財源は捻出できる。
 県独自の緊急事態宣言の期間は当初、7日までだった。しかし、県内の医療提供体制は依然として逼迫(ひっぱく)しており、宣言の延長はやむを得ない。
 5日の新規感染者数は41人だった。100人を超える日もあった時期に比べて数字が落ちてきたが、直近1週間の10万人当たりの新規感染者数は全国3番目に多い。病床占有率は85.3%で、県の警戒レベル判断で最も高い第4段階「感染蔓延(まんえん)期」の目安である70%を上回る。
 中途半端に宣言を解除しても、感染がだらだらと続いて宣言を何度も繰り返せば、かえって経済の打撃は長引く。国の緊急事態宣言も10都府県で3月7日まで延長になる。今は沖縄県でも感染対策を緩めずに、徹底して感染を抑制することが優先だ。
 1月の県内の感染拡大は、成人式後に新成人の感染割合が急増した。宮古島市では、市長選の運動が感染拡大に上乗せされたとの見方がある。人が集まる機会が感染を大きく広げてしまう。
 県は、旧正月にあたる12日前後で感染を広げる動きがないかを見極める考えだ。このまま判断指標に改善が見られれば、今月末の延長期限より前の宣言解除も見えてくる。
 悪化する経済の支援は、時短店舗と取引がある関連業者にも営業補償を行う必要がある。宿泊・観光施設や土産物店、交通事業者などには、人の往来促進を前提にした「GoTo」キャンペーンに替わる支援策が求められる。
 非正規を中心に雇い止めや解雇が増加しており、企業だけでなく世帯への直接支援も必要だ。政府は第1波で一律10万円の給付を行った。ひとり親家庭など困窮世帯への追加の再給付は急務だ。