<社説>泡消火剤説明一転 空自の危機管理に疑問


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 今年2月に航空自衛隊那覇基地から泡消火剤が流出した問題で、同基地はこれまでの説明を覆し、消火剤に有害性が指摘される有機フッ素化合物の一種PFOS(ピーフォス)が含まれている可能性があると沖縄県に説明した。

 空自は当初、PFOSは含まれていないと説明していた。しかし、本紙と研究者の調査で民間地に飛んだ泡からPFOSが検出された。その後、防衛省は改めて分析調査をすると表明していた。
 空自の危機管理に問題があったことは明らかだ。初期段階でなぜ「毒性はない」と断言できたのか。なぜ周辺住民に真っ先に説明しなかったのか。いまだに県に説明するだけで周辺住民への説明責任を果たしていない。少なくとも汚染された可能性のある土壌は早急に除去すべきだ。
 泡消火剤の流出について、空自は当初、事故直後に泡が飛んだ保育園などを訪れて写真を撮影したが、泡は回収していない。にもかかわらず、PFOSの含有を否定し「毒性や損傷性はほとんどない」と県に説明した。
 しかし、本紙記者が直後に民間地に飛んだ泡を採取し、京都大の原田浩二准教授(環境衛生学)が分析したところ、PFOSが検出された。原田氏によると、昨年4月に米軍普天間飛行場から流出した際に泡から検出されたPFOSと同程度の環境影響がある値だった。
 空自が県に説明したところによると、タンク内の泡消火剤をPFOS含有のものから非含有のものに入れ替える作業後、圧力をかけた際にバルブが破裂した。「PFOSが含まれる消火薬剤が配管に残っていた可能性も否定できない」としている。しかし、調査が流出から2週間後だったため泡自体は採取できず、流れ込んだ水路の水や海水などの採取にとどまっている。もはや正確な影響調査には限界があるだろう。
 有機フッ素化合物は自然環境中では、ほとんど分解されない。このため「永遠の化学物質」とも呼ばれ、人や動物の体内に長く残留する。発がん性のほか、出生時の体重に影響が生じる可能性が指摘される。中でも、毒性が強いなどのリスクがあるのが泡消火剤に含まれるPFOSだ。
 危機管理に関し「プロアクティブの原則」がある。疑わしいときは行動せよ、最悪事態を想定して行動せよという内容だ。
 空自は、少なくともバルブが破裂した時点で、PFOS拡散の可能性を疑い、情報を公表すべきだった。泡が飛散した場所には保育園や住宅がある。最悪を想定し、なぜ県民に接触や吸引の回避を呼び掛けなかったのか。米軍によるPFOS流出が県内で深刻な環境問題になっていることも承知していたはずだ。
 空自は有害性のある物質が流出・飛散した際の対応と再発防止策を県民に明らかにしなければならない。