<社説>初の線状降水帯情報 大規模災害へ備え万全に


社会
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 発達した梅雨前線の影響で沖縄本島地方は数日にわたり激しい雨が降った。6月29日未明には、気象庁が沖縄本島地方に「線状降水帯」が発生したとして、「顕著な大雨に関する情報」を速報して警戒を呼び掛けた。同情報は運用を開始したばかりで、全国初の発表となった。

 人身の被害は報告されていないが、県内各地で土砂崩れや冠水が起き、道路が寸断されるなどの影響が出ている。長雨で地盤が緩んだ状態にあり、引き続き土砂崩落などに注意する必要がある。梅雨が明けても、台風がやってくる。大規模化する災害への備えを万全にしたい。
 線状降水帯は、積乱雲が連続発生し、風に吹かれて連なることで局地的に豪雨をもたらすメカニズムだ。
 積乱雲群は線状に伸びた雨域をつくり出し、非常に強い雨が同じ場所で降り続く。球磨川が氾濫した昨年7月の九州地方の豪雨、2018年の西日本豪雨などで線状降水帯の形成が確認され、豪雨災害の一因とされている。
 気象庁は「顕著な大雨に関する情報」を創設し、線状降水帯の発生をいち早く伝え、避難行動を後押しする運用を6月17日から始めた。
 沖縄に顕著な大雨に関する情報が発表された29日は、停滞していた梅雨前線に暖かくて湿った空気が流入し、線状降水帯による非常に激しい雨が降り続いた。粟国村の粟国空港で降り始めからの雨量が307・5ミリに達した。名護市では1時間に73・5ミリの降水量を記録し、6月の観測史上最大を更新した。
 激しい雨が同じ場所に降り続くことで河川の水位が一気に上がり、氾濫を引き起こす危険性がある。降り始めからの雨量が100ミリを超える場合や、1時間に20ミリ以上の雨が降ると土砂災害が起こりやすくなるといわれる。線状降水帯情報のほか大雨の注意報や警報、自治体の避難指示などの情報を注視し、早めの行動を取ることが重要だ。
 一方で、29日に「顕著な大雨に関する情報」が発表されたのは、午前2時49分だった。夜が明けて気付いたという人が多かったのではないか。深夜未明の就寝時の災害にどう備えるかという課題が改めて浮き彫りとなった。
 せっかくの速報も届かなければ意味がない。気象庁は降水帯の発生を予測する「数値予報モデル」を開発し、半日前の予報を可能とすることを来年の梅雨期から目指すという。予報体制の整備を急いでもらいたい。
 世界的な気候変動は今や私たちの日常と無縁ではない。温暖化により海水面の蒸発量が増え、大量の水蒸気を蓄えた積乱雲が、梅雨や台風時にこれまで以上の雨を降らせていると指摘されている。
 老朽化したインフラの維持管理や更新、避難計画の見直しなど、自然災害の大規模化を前提にした防災体制の再点検に取り組む必要がある。