<社説>エネルギー計画素案 原発ゼロ目指すべきだ

 経済産業省は国の「エネルギー基本計画」の素案を示した。2030年度の新たな電源構成目標で再生可能エネルギーを主力電源と位置付け36~38%に拡大する。

 脱炭素社会実現に向け意欲を示したことを評価する。しかし、原子力は現行目標(20~22%)を維持する。世界の潮流から逆行している。脱原発に向け原発の構成を縮小しゼロに近づけるべきだ。
 菅義偉首相は昨年10月、50年までに温室効果ガスの排出を全体としてゼロにする「50年カーボンニュートラル」を宣言。バイデン米大統領主催の4月の気候変動サミットで30年度の削減幅を従来の「13年度比で26%減」から46%減へ大幅に引き上げると表明した。新たな電源構成は国際公約に沿うものだ。
 「最優先の原則で取り組み、最大限の導入を促す」と従来よりも強い表現を用いたのは、目標達成に向け、市場や企業にパラダイムシフト(劇的な変化)を促したのだろう。
 再生エネの19年度の発電割合は18.1%。今回打ち出した目標はその約2倍に相当する。経産省幹部は「達成は難しく、努力目標に近い」と指摘しているが、その認識は大いに疑問である。
 例えば、再エネ拡大の現実的な手段と期待される太陽光は、発電に適した用地の確保が難しいと指摘される。だが、専門家によると、開発が進む軽量パネルを住宅や工場の屋根への設置を拡大させれば、用地を探さなくても十分チャンスはあるという。30年以降は洋上風力が再生エネの中心を担うという見方もある。
 自然エネルギー財団の報告によると、世界的に再生エネルギーへの投資が拡大している。日本の電力10社の時価総額はデンマークの風力大手に及ばない。投資家の脱炭素志向が鮮明になっている。この傾向に拍車がかかるだろう。
 一方、原子力は低コストで安定供給が可能な「重要なベースロード電源」との位置付けを踏襲した。
 経済産業省が示した30年時点の各電源の発電コストの新たな試算によると、原子力は、東京電力福島第1原発事故をきっかけに安全対策費が膨らんで1割程度上昇。脱炭素化で導入量の増加が見込まれる太陽光発電が最も安かった。
 新たな基本計画では30年度に原発の発電比率を20~22%とする目標を据え置いた。そのために30基程度を稼働させる必要があるが、東京電力福島第1原発事故後に再稼働できたのは10基だけで、19年度の実績は6%程度だ。
 新増設や建て替えを打ち出す文言は今回もない。原発の発電比率を達成するために、運転期間を40年と定めた原則を骨抜きにして再稼働させることは許されない。世界全体の再生エネによる発電量は19年、初めて原発を上回った。福島第1原発事故の教訓は、脱原発であることをあらためて確認したい。



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