<社説>空自高濃度PFAS 調査終結は許されない


社会
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 航空自衛隊那覇基地内の泡消火専用水槽から、基準の約9200倍もの高濃度の有機フッ素化合物(PFAS)が検出された。今年2月に同基地で起きた泡消火剤流出事故を受けて対象設備の範囲を広げて水質調査を実施したところ、事故と直接関係のない水槽からもPFASの存在が明らかになったものだ。

 2月の流出事故当初、空自は「(PFASの一種である)PFOSは含まれない」と説明していた。だが、実際には基地内の広い範囲で相当量のPFASが存在する可能性がある。汚染源不明のまま調査を打ち切ることは許されない。原因特定まで徹底した調査を続けるべきだ。
 3日に空自那覇基地が発表した内容によると、泡消火剤を薄めて使うための水道水をためておく水槽のうち2カ所で、PFASの一種であるPFOSとPFOAの合計が国の暫定指針値(両物質の合計が水1リットル当たり50ナノグラム)を上回った。1カ所は1リットル当たりの合計が46万3400ナノグラム、もう1カ所が同1万4540ナノグラムという高さだった。
 空自那覇基地では2月に泡消火剤が流出、飛散する事態となった。原因について、PFOSを含む泡消火剤を非PFOS品へ交換した際の圧力試験で配管が破裂し、薬剤が流出したと説明していた。
 今回の調査は、事故を起こしたのとは別の設備を対象に実施し、本来ならPFASを含有していないはずの水道水の貯水槽であった。空自那覇基地は「原因は分からない」としているが、県民の不安に対してあまりにも無責任な態度だ。汚染の経緯を究明することは絶対に必要だ。
 6月には、うるま市の米陸軍貯油施設からPFASを含む汚染水の流出が起きている。この時の貯水槽も泡消火剤の原液を希釈するための水を蓄える施設だったが、連結するパイプから逆流した消火剤が残っていたことで、PFASが含まれていた。大雨が貯水槽内に入り込んで水かさが増し、汚染水が基地の外に流れ出す事態となった。
 自衛隊基地でも汚染水の貯蔵を続けている間に、自然環境にPFASが流れ出ていくことが起きかねない。これまでも識者から、日常的に土壌に汚染水が染み出している可能性が指摘されていた。
 泡消火剤を非PFAS品に切り替えるだけでは安心にはつながらない。PFAS汚染水の存在を把握するため、全ての自衛隊基地の設備や土壌で総点検に取り組むべきだ。
 存在が確認された汚染水の処分については、産業廃棄物として直ちに焼却処分することだ。米軍は普天間飛行場で貯蔵していたPFAS汚染水を濃度低減処理した上で公共下水道に流すという暴挙に出た。自然界に存在してはならないPFASを、少量でも排出させてはいけない。
 防衛省は自衛隊基地は当然のこと、米軍にも焼却処理を厳しく守らせることだ。