<社説>21衆院選 多様性 社会の在り方が問われる


社会
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 衆院選は、選択的夫婦別姓やLGBTQ(性的少数者)の問題など多様性を巡る論点が問われている。

 これからの社会の在り方に関わる問題でありながら、前国会で決着がつかなかった。各党と候補者は立場を明らかにして、有権者に選択肢を示してほしい。
 選択的夫婦別姓を巡って、法務省の審議会が1996年に民法を見直し選択的夫婦別姓制度を導入するよう答申している。法務省は制度導入の改正法案を準備したが、自民党保守派が「家族の絆が壊れる」と反対し、前国会で提出されなかった。
 世界経済フォーラム(WEF)が今年3月に発表した「男女格差報告」(ジェンダー・ギャップ指数)で、日本は156カ国中120位。先進7カ国(G7)で最下位だった。夫婦同姓を現在も法律で義務付けている国は日本だけだ。国連女性差別撤廃委員会は、日本に対し夫婦に同姓を強いる制度を改善するよう繰り返し勧告している。
 一方、全国の自治体で同性パートナーシップ制度が進み少数者への理解も広がりつつある。今年3月、国が同性婚を認めないのは違憲との初判決が札幌地裁で示され、結婚がもたらす法的利益を一切与えていない現状を「不合理な差別」と結論付けた。
 国際レズビアン・ゲイ協会によると、2020年末までに28カ国と台湾が同性婚を法制化している。こうした世界的な流れをくみ、LGBTなど性的少数者への理解増進を図る法案が前国会で提出直前まで来ていた。
 法案は国や地方自治体の努力義務として、性的少数者への国民の理解を増進する施策実施を定めている。与野党の実務者で提出を合意していたが、自民党内の一部保守派が異論を強く唱えた結果、前国会で提出を見送った。
 選択的夫婦別姓もLGBT法案も、ボールは国会にある。次の国会で制度の在り方を論議し結論を出さなければならない。このため、今回の衆院選の結果は、議論の行方を左右する。
 多様性に関する政策は、自民と公明、野党の違いがくっきり出ている。
 18日に実施された日本記者クラブ主催の与野党9党の党首討論で、岸田文雄首相(自民党総裁)を除く8党首が来年の通常国会への法案提出に意欲を示した。首相は、子どもの姓の決め方について制度導入の是非には触れなかった。
 自民の公約である政策集は、原案には記されていた「夫婦の氏に関する具体的な制度のあり方についてさらなる検討を進める」との一文が削除された。
 立憲民主、共産、社民、れいわ新選組の野党4党が合意した事実上の共通政策で、選択的夫婦別姓制度やLGBT平等法の成立を掲げている。多様性を認める社会を実現するのかどうか。有権者の選択にかかっている。