<社説>燃料価格高騰 経済対策に追加すべきだ


社会
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 世界的な燃料価格の高騰が続いている。その影響で電気料金が値上がりして、家計を直撃している。新型コロナウイルス感染拡大によって大きな打撃を受けている県経済も電気料金の高騰は回復の重い足かせとなる。

 政府は新型コロナウイルス禍に対応した経済対策だけでなく、原油高対策を急いでもらいたい。
 ニューヨーク原油先物市場は10月25日に約7年ぶりとなる一時1バレル=85ドル台を記録。液化天然ガス(LNG)や石炭価格も上昇している。
 新型コロナウイルス禍からの景気回復で原油の需要が高まる一方、産油国が協調減産しているため需給が逼迫し、小売価格へ転嫁された。
 経済産業省が発表した25日時点のレギュラーガソリン1リットル当たりの全国平均小売価格は8週連続で上昇。沖縄は5週連続で上昇し13年2カ月ぶりに170円台に達した。
 電気料金も上昇している。沖縄電力の11月の電気料金は一般家庭が最も多く契約する平均的モデルで7993円。12月分はさらに141円値上げされる。1月からの値上がり額は1209円となり、全国大手電力10社の中で最大の上昇幅となる。
 電気料金とガソリン代は家計支出に占める割合が高い。賃金が上がらない中で、エネルギー価格の上昇は生活に直結する。
 零細企業の多い沖縄の産業にも大きな影響を及ぼす。製造業は工場の電気代が跳ね上がり、バスやタクシーなどあらゆる業種に影響する。
 岸田文雄首相は1日の記者会見で、新型コロナウイルス禍に対応した経済対策を11月中旬に決定し、子育て世帯などに現金を給付すると表明した。観光支援事業「Go To トラベル」の再開を検討し、企業に賃上げを促すことも明らかにした。しかし、こうした対策は足元の燃料価格高騰の対策に本腰を入れなければ効果を上げないだろう。
 今必要なのは、燃料費高騰で影響を受ける家庭と産業への財政支援だ。都道府県と連携して早急に取り組んでほしい。省エネの徹底、再生可能エネルギーの導入量を増やし、化石燃料の割合を減らしていく取り組みも求められる。
 イタリアの首都ローマで開幕した20カ国・地域首脳会議(G20サミット)で、各国首脳は新型コロナウイルス禍からの経済再生に向けて、安定したエネルギー供給が重要だとの認識で一致した。バイデン米大統領は産油国に原油の増産を求めた。
 しかし、米国の石油増産要求は、石油や石炭など化石燃料への依存を減らす脱炭素化の流れと矛盾する。G20サミットで参加国全てが脱炭素を表明した。日本は2050年までに温室効果ガスの排出を全体としてゼロにする「カーボンニュートラル」を目指す。
 化石燃料価格に左右されない究極の対策は、脱炭素社会の実現だろう。