<社説>COP26と沖縄 脱炭素実現 待ったなし


社会
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 英国で国連気候変動枠組み条約第26回締約国会議(COP26)が開催されている。産業革命前からの世界の気温上昇を1・5度に抑えるというパリ協定の目標実現に向けて各国がどう一致できるかが焦点で、石炭火力廃止に賛同する国は46カ国に達した。

 環境危機が後戻りできなくなるまでに残された時間は少なく、脱炭素社会の実現が急務だ。各国の動きに注目するとともに、沖縄の課題を真剣に考える機会にもすべきである。
 1992年の地球サミットで条約が締結されて95年に始まった締約国の26回目の会議である。その間、京都議定書やパリ協定を巡り各国の思惑が交錯して、混乱を重ねてきた。結果として大気中の二酸化炭素の増加を食い止められず、平均気温も上昇を続けている。地球環境よりも経済成長や生活の豊かさ、あるいは軍事費を優先してきた結果だ。
 COP26のテーマは沖縄にとっても重い課題である。このまま温暖化ガスの排出を減らせなければ、今世紀末には海面が1メートル上昇するという。離島県沖縄にとっては生存に関わる脅威だ。台風の強大化の影響も甚大である。
 一方で、沖縄の電源の大半が化石燃料だ。沖縄電力は脱炭素のロードマップを策定し、風力、太陽光のほかに木質バイオマス混焼も始めており、アンモニアや水素での発電も研究するという。当然の努力である。沖縄科学技術大学院大学(OIST)などが取り組む海洋再生エネルギーも実用化が待たれる。
 しかし、将来の技術開発に期待する姿勢だけでは間に合わない。温暖化対策に後ろ向きな国に贈られる「化石賞」に、日本が前回に続き選ばれた。主催する環境団体は、COP26での岸田文雄首相の演説が石炭火力発電廃止の道筋を示さなかったことを理由とした。首相は水素やアンモニアでの発電に触れたが、環境団体からは「将来の技術革新に頼るのは解決の先送りだ」と批判されている。
 沖縄でも、風力や太陽光、蓄電池など、現在ある技術にもっと思い切った投資をして、目標に段階的に近づけていく戦略が必要なのではないか。
 沖縄県は3月に「気候非常事態宣言」をし、2030年、50年に向けた「クリーンエネルギー・イニシアティブ」を発表した。離島でのスマートコミュニティーモデルや家庭への太陽光発電・蓄電池の導入拡大、電気自動車(EV)の普及拡大などを掲げた。県は公用車のEV転換も進めている。さらに、充電設備の充実などで県がリーダーシップを取り、自治体、企業に広げてもらいたい。実績を積み上げていけば、同じ悩みを抱える島しょ国などへの技術移転も可能だろう。
 脱炭素は沖縄の生存、未来に直結する。その認識に立ち、沖縄で実践すべきこと、沖縄から発信できることを日常的な課題として考えたい。