<社説>COP26と若者 「空手形」でなく道筋示せ


社会
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 英国での国連気候変動枠組み条約第26回締約国会議(COP26)は日程を折り返した。

 各国が取りまとめる文書の骨子案の内容が明らかになった。気温上昇を1・5度に抑制するパリ協定の努力目標の重要性は盛り込まれたが、石炭や石油など化石燃料の利用縮小には触れていない。目標の発表だけの場で終わらせてはならない。目標達成への道筋を示すべきだ。
 気候危機を将来世代に回してはならない。国を超えて現世代に課せられた命題だ。
 会議の前半には脱石炭に向けて進展もあった。100カ国以上が強力な温室効果ガスのメタンの排出を2030年までに減らすと合意した。
 さらに、議長国の英国が脱石炭を最重要議題と位置付け、各国に要請した。これを受けて韓国など新たに23カ国が石炭火力の段階的廃止に賛同した。排出削減対策が講じられていない石炭火力脱却を共通ビジョンに掲げる共同声明には46カ国が賛同した。
 共同声明がその年限に掲げたのは、主要経済国が30年代、それ以外の国は40年代までの段階的な廃止である。
 30年代~40年代といえば、若者世代にとっては働き盛りとなる年代で、人によっては子育てとも重なる時期だろう。パリ協定の1・5度の努力目標は実現には30年の温室効果ガス排出量を10年比で45%削減する必要があるとされる。将来世代の暮らしへの悪影響を避けなければならないという危機感は多くが共有しているはずだ。
 将来の気候について若者が抱く不安も深刻化している。英国のバース大などが英国、米国、インドなど世界10カ国の16~25歳、1万人を対象にした気候変動に関する意識調査によると、75%が「将来が怖い」と回答。「人間は地球を守れずにいる」と考える若者も83%いた。「子どもを持つことがためらわれる」との回答も39%あった。
 気候変動に関する政府への不信感も高まる。「政府が若者を見捨てている」が65%、「将来世代を裏切っている」と答える若者も58%に上った。
 スウェーデンの環境活動家、グレタ・トゥンベリさん(18)はパリ協定の努力目標達成には「今すぐに思い切った排出削減が必要」と指摘する。今回のCOP26についても各国政府による取り組みに法的拘束力がない点を問題視し、「明白な失敗」「空手形」と厳しく批判した。先進国による「環境配慮に見せかけた、ごまかしの祭典」と酷評した。
 先の世代による温暖化のツケを負わされ、環境が厳しくなった地球で生きていかなければならない若者にとって、自国の損得を優先して煮え切らない各国政府の態度は許せるものではないはずだ。
 その声に耳を傾け、各国首脳はいま一度、危機感を共有し、化石燃料廃止に向けた強いメッセージを打ち出すと同時に、段階廃止に道筋を示すべきである。