<社説>参院沖北委統合再編 沖縄の声を軽んじるな


社会
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 17日に召集された通常国会で、参院に設置する特別委員会の再編設置案が賛成多数で可決された。その中で、「沖縄・北方特別委員会(沖北委)」と「政府開発援助等に関する特別委員会(ODA委)」との統合が決まった。

 沖縄の日本復帰50年を迎える重要な年の通常国会である。新たな沖縄振興特別措置法案などを政府は今国会に提出する。その法案を審議する沖北委の統廃合は沖縄問題の軽視であり、短絡的な再編と言わざるを得ない。
 特別委は衆参両院で、国会召集ごとに必要に応じて設置される。日本維新の会は無駄を削減するとして、特別委の統廃合を主張してきた。
 これを受け、自民党が参院特別委の再編案を提示した。地方創生・消費者問題特別委を「地方創生・デジタル特別委」と「消費者問題特別委」に分離し、沖北委とODA委を「政府開発援助等及び沖縄・北方問題に関する特別委」としてひっくるめ、特別委の総数は維持した。
 沖北委の所管大臣は内閣府の沖縄担当相であり、ODA委は主に外相だ。統合しても扱う議題が広範になるだけで、合理化にはつながらない。沖縄の振興に関する法案の審議時間は圧迫され、米軍基地をはじめとする諸問題を議論する機会も後退する。
 そもそも、海外への政府開発援助がなぜ沖北委との統合の対象なのか。復帰後に始まった沖縄振興開発計画は、2002年から「開発」の文字が外れ、沖縄振興計画として自立に向けて経済、産業の振興を図る方向性を打ち出してきた。今さら「開発」の名の付いた委員会と統合するのは時代にも逆行する。
 沖縄選出の野党参院議員2氏でつくる参院会派「沖縄の風」は、「沖縄の問題を訴える機会が減少する」と統合に反対する声明を発表した。
 野党にとって委員会の統廃合は政権追及の場が減ってしまうものであり、簡単には受け入れられない。それ以前に、沖縄の声を国政に届ける機会を確保していくことは、県民の負託を受けた国会議員一人一人が政治的立場を超えて果たすべき使命だ。
 復帰間近の1971年11月、沖縄返還協定を審議する臨時国会は「沖縄国会」と呼ばれた。復帰後も米軍基地が残ることを前提とした協定に対し、当時の屋良朝苗主席は建議書を抱えて東京へ向かった。だが、到着直前に衆院特別委で協定は強行採決され、沖縄の声は届かなかった。
 97年には、沖縄の米軍用地の強制使用手続きに関する特別措置法改正案が国会で成立した。衆院本会議で自民の野中広務氏は、改正案を審議した特別委員長として「再び国会が大政翼賛会のような形にならないようにお願いする」と異例の意見を表明した。
 少数者や地方の意見もすくい上げるのが「言論の府」のあるべき姿だ。沖縄の声を軽んじてはいけない。