<社説>自治体パート倍増 「官製」働く貧困の解消を


社会
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 自治体の制度新設が、働く貧困層(ワーキングプア)を固定化してしまっているのではないか。

 臨時・嘱託などばらばらだった非正規公務員の身分が「会計年度任用職員」に統一された2020年度以後、県内市町村のフルタイム職員が激減し、パートタイムに置き換わっていたことが分かった。
 財政負担削減のために、非正規職員の処遇改善を怠ることがあってはならない。市町村に迅速な対応を求める。
 総務省の地方公共団体定員管理調査(21年4月1日現在)によると、ピークの1994年に全国で328万2千人いた地方自治体の正規職員は、2018年に273万6千人まで減少した。21年は教育部門などで微増したものの1994年より48万人少ない。
 地方分権一括法の施行、三位一体改革、国からの支出を次々と絞られた地方自治体が、定員削減の流れを加速させたために正規職員が減少した。だが、定員削減でも仕事が減るわけではなく、非正規への置き換えや民間委託などでまかなっているのが実情だ。
 自治労が全国の自治体職員の人数や労働条件について調査(20年6月)したところ、非正規職員は全体の38・9%を占め、16年の前回調査に比べ6・2ポイント増加した。もはや非正規職員抜きでは公的サービスが成り立たない状況だ。
 会計年度任用職員制度は、多様化する行政需要に対応するため、臨時・嘱託など非正規職員数が増加する中、不明瞭だった採用方法や任期を明確化する目的で導入された。期末手当(ボーナス)の支給など、職員の処遇改善を図る狙いがあった。
 地方自治総合研究所のまとめによると、制度移行を境に、県内41市町村の非正規公務員全体に占めるフルタイムの割合は16年度の54%から20年度の6%に激減した一方、パートタイムは46%から94%に増えた。
 市町村が非正規職員をパート化することによって、退職手当や扶養や住居などの手当の支払いを免れ、財政負担の低減を図ったとみられる。期末手当は出るが、月給が減るので期待した改善にはつながっていないという声もある。
 国は待遇改善の原資として全国の自治体に地方交付税を配布しているはずだが、本来の目的以外に流用している可能性がある。そうであれば、制度の趣旨を骨抜きにするもので看過できない。
 さらに非正規職員の中で、フルタイムとパートの間に差別的な扱いを許容する点も問題である。自治体が、ワーキングプアを生み出す「官製ワーキングプア」を放置することは許されない。
 総務省は20年に、処遇改善を求める通知を全自治体に出したが改善されていない。自治体の業務は地域住民の暮らしと密接につながっている。自治体の公務労働に対する姿勢が問われていることを肝に銘じなければならない。