<社説>米軍が外出制限解除 重点措置中は継続せよ


社会
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 在日米軍は1月31日、新型コロナウイルス感染拡大を受けて実施していた基地からの外出制限を解除した。日本政府も解除に同意した。

 今回の感染拡大の引き金になったのは米軍であり、日本政府対応が後手に回ったため、沖縄は過去最多の新規感染者が発生した。
 沖縄県が外出制限の再延長を求めたにもかかわらず、米軍が制限を解除したことは全く容認できない。少なくとも県の「まん延防止等重点措置」期間が解除されるまで、外出制限を継続すべきだ。
 昨年12月17日、県はキャンプ・ハンセンで大規模クラスターが発生したと発表した。同基地の従業員が県内初の「オミクロン株」の確認事例となった。
 このとき、米軍は沖縄を含む全ての在日米軍施設で、米国からの出国時にPCR検査を実施していなかったことが発覚した。入国直後の行動制限期間中に米兵らが基地内を自由に動き回れていたことも判明した。米軍の水際対策に欠陥があったのだ。
 しかし、林芳正外相が米兵の外出制限を含む対策強化を要請したのは、キャンプ・ハンセンのクラスター発生から20日後だった。
 水際で食い止められない原因は、感染症対策を米軍任せにせざるを得ない日米地位協定の存在がある。9条によって入国手続きに関し日本の法令が適用されない。水際対策に穴があいた状態なのである。米軍の特権的な地位を定めた協定を見直して穴をふさがない限り、米軍由来の感染拡大が繰り返されるだろう。
 しかし、岸田文雄首相は1月21日の衆参両院の代表質問で、日米地位協定を改定しない考えを示した。なぜ、国民の生命を危険にさらしている地位協定を見直すと表明できないのか。
 在日米軍の外出制限終了について、外務省は「これまでの双方の継続監視で、在日米軍関係者の新規陽性者も減少傾向にある結果として終了するに至ったと受け止めている」と説明した。しかし、米軍の検査方法には疑問がある。
 在日米軍基地で米軍が実施する抗原検査について、日本政府は検査方法を確認できていない(1月24日時点)。日本政府は国内で実施するものと同じ「抗原定量検査」を求めている。「抗原定量検査」はPCR検査と同等の検査精度があるからだ。しかし、米側は検査内容を明かしていない。24日の衆院予算委員会で、岸田首相、林外相が答弁で明らかにした。この状態で、どうして米軍の報告をうのみにできるのか。
 さらに感染力がこれまでのオミクロン株より18%高いとされる別の派生株が国内で見つかっている。派生株へ置き換わる可能性も指摘される。現状でも「制限を解除できる状態にあるとは言えない」(玉城デニー知事)中で、米軍の外出制限の解除はあまりにも拙速だ。