<社説>強制不妊に賠償命令 「時の壁」突破に道開け

 旧優生保護法下で不妊手術を強いられたのは憲法違反として国に損害賠償を求めた訴訟で、大阪高裁が初めて賠償を命じた。国による人権侵害を訴える裁判では「20年の除斥期間」が「時の壁」となってしばしば救済を阻んできた。今回の判決がその突破に道を開くことを期待したい。

 「不良な子孫の出生防止」をうたった旧優生保護法(1948~96年)は、同意を得ない強制手術も容認し、少なくとも約2万5千人に手術が実施されたとされる。96年に差別的条項を削除して「母体保護法」となり、2019年に救済法が成立した。
 19年から昨年にかけての6件の地裁判決のうち4件が違憲とした。しかし、4件とも除斥期間により賠償請求を棄却した。除斥期間の起点についても、国が手術時と主張したのに対し、判決は手術時と旧法改正時に分かれていた。
 今回の大阪高裁判決は、旧法改正まで権利侵害状態が続いたとして起点を旧法改正時とした。その上で、起点から提訴まで20年以上経過しているが、賠償請求が可能と知ってから6カ月以内は除斥期間を適用されないとした。「6カ月に当てはまらない人もいるのではないか」という指摘はあるものの、除斥期間を適用しなかった意義は大きい。
 ハンセン病訴訟などと同様に、政府は救済を優先して上告を断念すべきだ。判決は、旧法を制定し長年放置した国会も断罪した。国会も、不備が指摘されている救済法の見直しを急がねばならない。
 民法で「除斥期間」を定めているのは、法律関係を一定期間内に確立させることが目的である。除斥期間の適用を認めなかった最高裁判決は2件しかない。予防接種で後遺症となり国家賠償を求めた訴訟では、訴訟能力がなかったという「特殊事情」が認められた(1998年)。もう一つは、行方不明とされていた家族が実は殺されていたことが分かり、時効で無罪だった加害者に損害賠償を求めたケース(2009年)だ。
 「時の壁」は、被害救済を求める人々を苦しめてきた。国策だったドミニカ移民で被害を受けた原告は「時の壁」に阻まれた。被爆者援護法の適用や戦災被害の賠償などを訴えた裁判の多くが「除斥期間」に加えて、国家賠償法施行前の行為に国は責任を負わないとする「国家不答責の法理」によって救済から排除されてきた。一方、B型肝炎訴訟では昨年、除斥期間の起点を再発時とする最高裁判決で救済範囲が広がった。ハンセン病訴訟も、起点を法の廃止時として救済を実現した。
 血のにじむような努力をしてやっとの思いで司法に訴えても、「除斥期間」や「国家無答責」を盾に国が救済を拒絶することをこれ以上許してはならない。国の責任が明白なら一般の民事上の争いと同列にすべきではない。「司法権の独立」が改めて求められている。



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