<社説>主席公選で自民資金 選挙介入は許されない


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 政権与党の自民党による沖縄の選挙介入の一端が明らかになった。

 共同通信によると、1968年11月に実施された初の行政主席公選で、親米保守系候補に自民党から70万ドル超の資金が提供され、関係者が受領を認めた。自民党の選挙資金提供は日米の公文書で判明していたが、受け取った側が認めるのは初めてとみられる。
 施政権返還(日本復帰)後も選挙介入している。1998年の知事選で、官房機密費から選挙資金が一方の陣営に渡っていたという証言もある。主席公選は、こうした不当な政治介入の源流といえる。民主主義の根幹である選挙を金の力でゆがめることがあってはならない。
 証言したのは親米保守系候補の西銘順治氏陣営の元幹部で、保守政党「沖縄自民党」の事務局長を務めた宮城武氏。当時の沖縄の通貨はドルだったため「円建ての援助をドルに切り替えないといけなかった」という。沖縄にあった米国系の「アメックス銀行」などを経由する仕組みを構築し「2、3回に分けて受け取った」という。
 米公文書によると、自民党は68年8月、西銘陣営に72万ドル(当時のレートで2億5920万円)の資金提供を確約。沖縄自民党の吉元栄真副総裁が窓口となったことが分かっている。
 開示された日本の外交文書(68年6月)によって、スナイダー米国務省日本部長が「(自民)党に対し、沖縄への選挙資金送金方法につき直接申し入れを行った」ことが明らかになっている。
 初の主席公選で自民党は「わが国の安全のためにも、そして沖縄の防衛のためにも沖縄の(米軍)基地はなお不可欠」とし、沖縄の施政権返還後も在沖米軍基地を存続させる方針を示している。そのために保守系候補の当選を目指したのだった。
 一方、米国は西銘氏の擁立から介入し、選挙時に高等弁務官資金を投入し、苦戦が予想される選挙区に米軍が民生活動をすることによって支援した。
 選挙結果は、革新陣営が擁立し「即時無条件全面返還」を求める屋良朝苗候補が当選した。
 選挙介入は主席公選にとどまらない。1998年11月の県知事選を巡り、当時官房副長官を務めていた鈴木宗男氏が、自民党推薦の稲嶺恵一氏の陣営に内閣官房機密費3億円が渡っていたと証言した。米軍普天間飛行場の県内移設を容認していた稲嶺氏が、県内移設に反対した現職の大田昌秀氏を破り、初当選した選挙だった。
 沖縄だけでなく、2019年の参院選広島選挙区を巡る大規模買収事件のように、特定の候補者を支援するために巨額の資金が使われるケースは後を絶たない。これは民主主義をないがしろにする行為である。断じて許してはならない。