<社説>改正児童福祉法成立 見守り続ける体制整備を


社会
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 改正児童福祉法が成立した。児童養護施設や里親家庭で育つ若者の自立支援に関し、原則18歳(最長22歳)までとなっている年齢上限を撤廃する。

 日本が批准している国連の「子どもの権利条約」は、子どもは命を守られ、子どもの利益を最優先に考え、いかなる理由でも差別されないという原則がある。その原則に従えば、法改正は一歩前進といえよう。改正を機に継続的な見守りができる支援体制の整備・拡充が求められる。
 虐待などにより親元で暮らせない子どもを施設や里親の下で育む社会的養護下の児童は全国で約4万2千人(2021年3月時点)。原則18歳までに自立することになるが、親元を頼れずに困難を抱えがちだと指摘される。
 社会的養護を巡り厚生労働省は21年、施設などから離れた人(ケアリーバー)の実態に関する初の調査結果を公表した。それによると「収入より支出が多い」が22.9%に上った。過去1年間に医療機関を受診できなかったのは20.4%。不安なことがある人に利用したい支援内容を聞くと「金銭面」が29.0%で最も多く、次いで「住居や食事」が26.7%だった。
 退所後にサポートがなかった人が19.4%おり、支援の充実が望まれる。施設を出た後も、本人に寄り添い続ける仕組みが大事だ。
 法改正後は、支援を年齢で一律に制限することをやめ、施設や自治体が自立可能と判断した時期まで継続できるようにする。施設を出た後のサポートも強化するため、相談を受ける拠点の整備にも取り組む。
 一方、児童虐待対応件数は2020年度に約20万5千件と過去最多を更新した。沖縄県内も過去最多となり、前年度より228件(14.2%)増加した。増加率は全国の5.8%を上回り、全国11番目の高さだった。子どもの支援や子育て世帯の孤立を解消する対策が急務だ。
 改正法の柱の一つに、虐待を受けた子どもを親から引き離す一時保護への司法審査の導入が挙げられる。親権者の同意がない場合、児童相談所が裁判所に「一時保護状」を請求し、裁判官が審査する。
 親と子どもの権利を制約する強い措置のため、国連の子どもの権利委員会も手続きの透明性の確保のため、司法審査の導入を日本政府に求めていた。客観的な立場で司法が後ろ盾になることによって、判断の中立性、透明性を高め、児相と親との対立を和らげることに期待したい。
 改正法は、一時保護や施設入所といった措置の際に子どもの意向を確認し、勘案することを義務付ける。子どもが自分に関係のある事柄に対し意見表明することは、子どもの権利条約の原則である。虐待を受けた子どもの本音を引き出し、サポートする「意見表明支援員(アドボケイト)」の養成も急がれる。