<社説>知事選主要候補の主張 具体的政策で論戦徹底を


社会
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 8月25日告示、9月11日投開票の県知事選に出馬を予定する主要候補3氏の論戦が始まっている。現職の玉城デニー氏、前宜野湾市長の佐喜真淳氏、前衆院議員の下地幹郎氏それぞれが本紙のインタビューに答え、自身の主張や政策を表明した。

 それを見ると、米軍基地問題の解決手法や沖縄の経済振興の在り方など重要政策で違いがみられ、三者三様の様相を呈している。
 知事選は沖縄の将来を左右する重要な選挙であり、県内政局に大きく影響する天王山だ。立候補予定者には、有権者に判断材料を示す論戦の徹底を求めたい。具体的で分かりやすい政策を示してほしい。
 主要候補3氏の主張の違いが際立っているのが、米軍普天間飛行場の移設に伴う名護市辺野古での新基地建設に対する態度である。
 玉城氏は「断固反対」と主張。埋め立て予定の軟弱地盤工事は「想定以上の年月がかかり基地負担の軽減につながらない」と述べた。
 佐喜真氏は普天間の危険性除去を挙げ、辺野古移設は「現実的策として容認せざるを得ない」とし、普天間返還の前倒しを求めた。
 下地氏は軟弱地盤の埋め立ては「必要性がなくなった」とし、鹿児島県馬毛島への訓練移転で「普天間の危険性が除去できる」としている。
 4年前の前回知事選にも出馬した佐喜真氏は当時、建設の是非を明示しなかったが、今回は「容認」を明言した。3氏には実効性のある具体的解決策を打ち出してほしい。論戦の深まりを期待する。
 一方、経済振興についても主張に違いがある。玉城氏は「感染症対策・経済回復と、新21世紀ビジョンの施策前進」を掲げる。佐喜真氏は「政府と協議し、沖縄関連予算で3500億円を獲得する」と強調。下地氏は「民間活力を使った投資増やPFIでの社会インフラの整備」などを挙げた。コロナ禍で落ち込んだ沖縄経済をどう立て直すのか、具体的道筋を示してほしい。
 4年間の玉城県政への評価も問われる。玉城氏自身は「291の公約全てに着手し、287の事業を進めている」とアピールする。対する佐喜真氏は「公約291のうち達成率は2・7%で、県民を裏切った政治だろう」と批判。下地氏は「辺野古は埋め立てられ、まさに自らの政策を遂行できなかった」と指摘した。
 この際、玉城県政の公約一つ一つを具体的に検証し論戦の俎上(そじょう)に載せてほしい。現県政が継続するにせよ、代わるにせよ、県民本位のよりよい政策へ磨き上げていくことにつながるからだ。
 知事選は辺野古新基地建設に反対する「オール沖縄」勢に自民・公明と、無所属が挑む構図になるとみられる。結果はその後の勢力争いをも占う。有権者は立候補予定者の政策を見極め、論戦に耳を傾けて熟慮した上で貴重な一票を投じてほしい。