<社説>尖閣国有化10年 緊張緩和への道筋探れ

 2012年に尖閣諸島が国有化されて11日で10年となった。中国海警局の船による領海侵入が常態化し、偶発的な衝突が懸念される状況が続いている。29日に日中国交正常化50年を迎える。対話によって不測の事態を避けるとともに、長期的視野に立った緊張緩和の道筋を探るべきだ。

 国有化は、12年4月に当時の石原慎太郎東京都知事が尖閣諸島を都として購入すると表明したことが発端だ。石原氏が武力衝突も辞さないと強硬論を唱えていたことから、当時首相だった野田佳彦氏は「都が保有するよりも『平穏かつ安定的な管理』に近づくと思った」「あの時点でやむを得ない判断だった」と振り返っている。
 中国政府は国有化に猛反発し、中国で大規模な反日デモが続いた。一部政治家の無責任で身勝手な言動が、日中関係を最悪にし、今に至る緊張を導いたのである。
 その後、中国は法律を制定して海警局の武器使用を認めるなどしてきた。日本も巡視船の増強などを重ねてきた。自衛隊は尖閣も想定した「離島奪還作戦」の訓練を実施している。沖縄に長射程ミサイルを配備する計画も浮上した。このままでは、南西諸島全域の有事となり、「第二の沖縄戦」が起きかねない。
 日本政府は、尖閣は「固有の領土」であり領有権問題は存在しないという立場だ。17年には、教育指導要領に盛り込み、教育も巻き込み始めた。領土問題は双方のナショナリズムをあおる。「固有の領土」かどうかは双方に言い分がある。一方的に主張し合っても対立がエスカレートするだけだ。尖閣諸島は琉球国時代から琉球人の生活圏だ。政治に利用され、ましてや戦場になることなど絶対に受け入れられない。
 18年に、尖閣周辺での不測の事態が有事へと展開することを防ぐため、両政府間で防衛当局間の相互通報体制「海空連絡メカニズム」の運用が始まった。しかし、核心となるホットラインはいまだに開設できていない。昨年12月の日中防衛相会談で、今年中の運用開始を目指すことで一致している。まずはこの開設を最優先すべきだ。
 日中間には、50年前の共同声明に基づいて結ばれた平和友好条約がある。第1条で「全ての紛争を平和的手段により解決し、武力または武力による威嚇に訴えないことを確認する」とうたっている。両政府両国民ともこの精神に立ち返って、尖閣を紛争の火種ではなく平和の海にする努力が求められる。
 15年に来沖した平和学の第一人者、ヨハン・ガルトゥング氏はシンポで「尖閣を当事国が共同管理し共同プロジェクトを行うことで共感が育まれる」「漁業や自然保護など小さな一歩から始めるのが大事」などと提言した。当事者として沖縄から長期的、広域的視野に立った取り組みを模索することも必要だ。



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