<社説>先島に避難シェルター 全く話にならない計画だ

 全く話にならない計画だ。政府が、台湾海峡や南西諸島での有事を想定し、先島諸島などで住民用の避難シェルターの整備を検討していることが分かった。

 だが、77年前の沖縄戦の教訓から、戦争が始まってしまえば住民を守ることは不可能だ。瞬時に飛来する弾道ミサイルに対しシェルターに避難する時間があるのだろうか。ミサイルは先島だけに飛んでくるとは限らない。米軍基地が集中する本島中部も標的になるだろう。
 そもそもミサイルが飛んでくるようでは手遅れだ。抑止論を持ち出して、軍拡競争に明け暮れるより、紛争を避ける外交力を磨くべきだ。
 島に配備された自衛隊がミサイルの攻撃に耐え、かつ住民の安全を確保することは可能だろうか。自衛隊制服組幹部は「自衛隊に住民を避難させる余力はないだろう。自治体にやってもらうしかない」と発言している。
 しかし、沖縄戦は行政が住民を守ることは不可能だと証明している。沖縄戦の直前に、県外疎開が実施された。制海権と制空権を失った中で県関係者を乗せた船舶26隻が米軍に撃沈され、4579人が犠牲になった。本島北部への疎開も、食料や住居などの準備が整わず犠牲を増やしただけだった。
 国民保護法に基づく試算によると、石垣市は市民避難に「9.67日」必要で、航空機延べ435機が必要とされる。宮古島市も観光客を含む避難に必要な航空機の総数を延べ381機と試算している。これほどの航空機を一度に確保できるだろうか。現実離れした想定である。
 離島周辺で戦闘が始まった場合、避難用の航空機や船舶の安全確保は難しいだろう。元自衛隊幹部は、有事の際に敵国による南西諸島に対する海上封鎖を予想する。海上を封鎖されると船舶による避難は困難だ。
 ところで、住民を守るシェルターはどれだけ必要なのか。沖縄戦は地上戦に巻き込まれた住民の4人に1人が犠牲になった。当時、住民が避難した「シェルター」(ガマ=自然洞窟)から、住民が日本兵によって追い出されたことも想起したい。シェルターを整備したら安全なのか。そうではないだろう。
 ロシアのプーチン大統領のウクライナ侵攻によって、欧米との間で相互不信が広がり「新冷戦」と言われる事態に直面している。日本ではウクライナ侵攻を機に、台湾有事に備え対中強硬論を振りかざす言説が台頭している。
 このまま軍拡に突き進めば、南西諸島で偶発的な衝突が起きかねない。その結果、犠牲になるのは住民である。有事を回避する最大の国民保護策とは、シェルターではなく、沖縄戦の教訓である「命どぅ宝」の思想、つまり人間の安全保障の実践であり、国際協調であることを繰り返し強調したい。



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