<社説>土地規制法全面施行 根拠なき悪法は認めない

 安全保障上、重要な施設の周辺や国境離島を対象とする「土地利用規制法」が20日に全面施行される。規制対象区域では土地の所有者や国籍の調査が可能になり、国民のプライバシーが侵害される。

 米軍基地が集中し、国境を接する沖縄には深刻な影響がある。そもそも土地規制法は立法の必要性を裏付ける根拠のない悪法だ。制限なく国民の権利を侵害することが明白な法の全面施行は決して認められない。
 全面施行後、政府は自衛隊基地・駐屯地や原発周辺の土地、領海の根拠となる国境離島を対象区域に指定する。沖縄でいえば、那覇空港で自衛隊機が発着する那覇市、米軍基地の集中する本島中北部、自衛隊駐屯地が建設され、国境離島でもある宮古、八重山地域ほぼ全てが含まれる。
 全面施行の閣議決定と同時に決まった基本方針では、勧告や罰則付きの命令が出せる妨害行為として、妨害電波の発射やレーザー照射のほか、航空機発着に障害となる工作物設置を挙げている。
 だが法案審議の過程で明らかになったのは、過去にこうした機能阻害行為が国内で確認された例はないということだ。規制が必要とされる事実がないのに、新たに法整備する必然性は全くない。例えば建物の高さ制限であれば、航空法などで規制がある。
 沖縄でいえば、名護市辺野古の新基地建設に当たり、沖縄工業高等専門学校の校舎などが米軍の高さ制限を超えているが、日米の協議で適用除外となった。つまり政府のさじ加減でどうにでもなる。
 法の目的は別にあるのではないかと疑念が募る。2021年6月の参院内閣委員会参考人質疑で、馬奈木厳太郎弁護士が述べたように「安全保障の名目で(市民を)監視下に置く発想」が見えるからだ。
 対象となる土地所有者の調査には、公安調査庁などの情報機関が協力することも条文上は可能だ。分析のため、これら情報機関への個人情報提供もあり得るとしている。
 政府は21年6月の参院内閣・防衛両委員会による連合審査では、個人の思想信条を調べることも「排除されていない」と答弁した。
 自民党の杉田水脈衆院議員(比例中国ブロック)は辺野古新基地建設に反対する市民運動にも、土地規制法の拡大適用を求めたことがある。政府の基本方針で、基地周辺の集会開催を規制しないのは「私有地」に限定している。公道上など私有地でなければ、杉田氏が言うように正当な市民の行動も制限できるのだ。
 施行後の焦点は地方自治体からの意見聴取だ。規制区域指定へ向け、各自治体に住民の権利を守れるか、という観点からの判断を期待したい。
 思想信条の調査まで含む土地規制法を無条件に受け入れることは、憲法が保障する基本的人権の侵害を認めることと同義だ。政府への白紙委任があってはならない。



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