<社説>北朝鮮ミサイル日本通過 緊張緩和が再発防止策だ


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 北朝鮮が4日に発射した弾道ミサイル1発が青森県上空を通過し、太平洋側に落下した。推定飛行距離は約4600キロで北朝鮮のミサイルとしては過去最長を記録した。日本上空を通過したのは2017年9月以来7度目だ。

 グアムや米本土にも届く中距離以上のミサイル能力向上を強調し、緊張激化によって米国に敵視政策撤回を迫る狙いや、日米韓の軍事訓練への反発があるとみられる。
 日本住民の生命・財産を脅かす暴挙であり、強く抗議する。ただ背景には、朝鮮戦争がいまだに休戦状態で、終戦に至っていないことがある。2018年に北朝鮮・韓国両国が「朝鮮半島を恒久的な平和地帯とする」とした「9月平壌宣言」に立ち返り、日米中ロなど関係国が緊張緩和に努めることこそが、ミサイル発射への最大の再発防止策だ。
 北朝鮮は今年、異例のペースでミサイル発射を繰り返してきた。3月24日には大陸間弾道ミサイル(ICBM)を高角度のロフテッド軌道で発射した。最近も9月25、28、29日と10月1日に短距離弾道ミサイルを発射した。
 今回を含めた最近の弾道ミサイル発射は、米韓両海軍が9月に日本海で約5年ぶりとなる大規模合同演習や今月の日米共同訓練に対する威嚇の意味があるとみられる。日米韓は威嚇で対抗し緊張をさらに激化させるのではなく、冷静に対処すべきだ。
 北朝鮮のミサイル開発の経緯を振り返ると、対話が一定の効果を発揮した時期もあった。2017年に全米を射程に収める大陸間弾道ミサイル(ICBM)の発射実験成功を発表すると、当時のトランプ米大統領が対話に動き、史上初の米朝首脳会談に先立つ18年4月、核実験とICBM発射実験中止を決めた。同年9月には韓国、北朝鮮の両首脳が、非核化への具体的措置を示した「9月平壌宣言」を発表した。
 しかし19年2月に米朝首脳会談が決裂すると北朝鮮はミサイル発射実験を再開。昨年1月に多様な核攻撃技術の開発方針を表明し同9月には極超音速ミサイルを初めて発射したと主張した。今年に入ってからは巡航ミサイルを含めて20回以上発射している。
 5月に就任した尹錫悦(ユンソンニョル)韓国大統領は北朝鮮への先制打撃能力確保を掲げ米韓同盟を重視。先月訪韓したハリス米副大統領と会談し、米国が核を含む戦力で防衛に関与する「拡大抑止」の義務を確認した。北朝鮮のミサイル発射はこの米韓の動きへの対抗とみられる。
 韓国・北朝鮮はじめ関係国は軍事的な挑発や制裁などの圧力で対抗し合うのではなく、いま一度立ち止まり、対話路線を模索すべきだ。
 北朝鮮を巡る情勢は、軍事基地が集中する沖縄にも直結する。沖縄からも、軍備による「平和」ではなく、対話による真の平和を粘り強く訴えていく必要がある。