<社説>旧統一教会推薦確認書 全議員調査し公表せよ


社会
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 世界平和統一家庭連合(旧統一教会)の関連団体が国政選挙の際、自民党の国会議員に対し、教団側が掲げる政策を推進するよう「推薦確認書」を提示し、署名を要求していたことが判明した。少なくとも議員側4人が認め、実際に署名した議員もいた。

 岸田文雄首相は国会答弁で「自民党の政策に影響があったとは思わない」との認識を示したが、関連団体が推薦確認書で求めた項目は自民党が掲げる政策と共通点が多い。
 岸田首相は旧統一教会への質問権行使と被害者救済に乗り出した。だが肝心なのは足元の自民党との関わりである。推薦確認書について全議員調査し、その結果を公表すべきだ。その上で関係性を断たなければ信用できない。
 旧統一教会関連団体は世界平和連合と平和大使協議会。推薦確認書には憲法改正や安全保障体制強化、LGBTや同性婚合法化への慎重な対応、共産主義への対抗などが挙げられ、「以上の趣旨に賛同する」とも書かれていた。
 教団関係者によると、全国で数十人規模の国会議員に署名を求めていたとみられ、自民党議員の政治活動に影響を与えた可能性がある。実際、自民党の斎藤洋明衆院議員は署名を認めた。教団には選挙で電話かけの協力を得た。
 推薦確認書によって信徒が応援や手伝いをした実態がある。政策面で影響が全くないということはあり得ない。自民党はこの関係性こそ、徹底的に調べるべきだ。多くの国民がそこに注目している。
 岸田首相は内閣支持率の低下を懸念してか、旧統一教会への厳しい態度を強めている。17日に宗教法人法に基づき教団を調査する方針を表明、解散命令請求を視野に踏み込んだ。19日には、その請求要件として宗教法人法が定める「法令違反」の解釈について、前日の「民法の不法行為は入らない」という答弁を覆し「入り得る」と述べ、請求のハードルを下げた。被害者救済法案を巡っては、自民党が野党との協議会設置に応じ積極的態度を示すのに躍起だ。
 しかし一方で自民党議員と旧統一教会側との接点が次々と判明、野党は報道で指摘されたら追認する「後出し」を批判し追及を強めている。教団側との接点が次々判明した山際大志郎経済再生担当相は「これから新しい事実が出てくる可能性がある」と国会で答弁した。それでも首相は山際氏の更迭を拒否し続けている。身内に甘すぎる。
 岸田首相は推薦確認書について党の調査を求められ「党の(調査)取りまとめの中にどのように反映されるかがポイントだ」と述べた。まるで人ごとである。安倍晋三元首相、細田博之衆院議長と旧統一教会との関係も曖昧なままだ。身内の落ち度をなかったことにして教団に責任を全て負わせる思惑ではないかと疑いたくなる。有権者はごまかせない。問われているのは自民党の自浄努力である。