<社説>安保関連3文書決定 「戦争する国」を拒否する


社会
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 政府は外交・安全保障政策の指針「国家安全保障戦略」など新たな安保関連3文書を閣議決定した。

 戦後堅持してきた憲法9条に基づく専守防衛から逸脱し、日本が自ら戦争をする国に変貌する決定である。戦後の安保政策を大転換させるにもかかわらず、国会での議論を経ずして閣議決定という手法で決定することは断じて容認できない。
 3文書は、他国領域のミサイル基地などを破壊する敵基地攻撃能力の保有や、長射程ミサイルの増強を明記した。
 政府答弁書(2020年10月)によると「専守防衛」とは「相手から武力攻撃を受けたとき初めて防衛力を行使し、その態様も自衛のための必要最小限にとどめ、また、保持する防衛力も自衛のための必要最小限のものに限るなど、憲法の精神にのっとった受動的な防衛戦略の姿勢をいうもの」と説明し、政府として、「我が国の防衛の基本的な方針である『専守防衛』を維持することに変わりはない」としている。この答弁書からすると敵基地攻撃能力の保持は「専守防衛」を根本から覆す。
 外交・安全保障に関する自民党の提言には、敵基地攻撃能力の保有を求めた上で、攻撃目標として「指揮統制機能等」が含まれている。
 1956年に船田中防衛庁長官は鳩山一郎首相の答弁を代読し「他に手段がないと認められる限り、誘導弾等の基地をたたくことは、法理的には自衛の範囲に含まれる」との見解を示した。
 しばしばこの部分が取り上げられるが、後段で「侵略国の領域内の基地をたたくことが防御上便宜であるというだけの場合を予想し、そういう場合に安易にその基地を攻撃するのは、自衛の範囲には入らないだろう」と答弁している。「指揮統制機能」への攻撃などは政府答弁の「防衛上便宜である」との考え方であり、政府が説明する「自衛の範囲に入らない」と解釈すべきではないか。
 さらに「他に手段がない」という政府答弁も重要だ。これまで米軍は「矛」で自衛隊は「盾」という役割分担があった。日米同盟を強化している今、「他に手段がない」状態とは言えないだろう。
 3文書では、防衛費とそれを補完する取り組みを合わせた予算水準について、国内総生産(GDP)比2%を目指すと掲げた。財源として法人、所得、たばこ税を増税して防衛費を確保していく方針だ。加えて建設国債の発行による借金で将来世代に負担を先送りまでして軍備を拡大することは許されない。
 台湾有事を口実にして、国会審議も地元自治体・住民への説明もほとんどないまま、南西諸島の軍事要塞化がどんどん進んでいる。米中対立で偶発的な衝突が起きれば、沖縄が再び戦場になりかねない。
 繰り返し主張してきたように、武力に頼らず外交努力で緊張を緩和すべきだ。