<社説>マイナカード 強引な新制度導入やめよ

 児童手当や年金などの振込先として行政機関が把握している住民の口座情報を、マイナカードにひも付けして登録する新制度の導入を政府が検討している。住民に通知し、拒否しなければ自動的にひも付けする案も出ている。

 給付金支給の迅速化が狙いだが、強引ではないか。通知があったことを住民が見落とすケースもあるだろう。本人が拒否しない以上、「同意した」と見なすような新制度からは、国への従順を国民に迫る態度がすけて見える。
 昨年11月のデジタル庁有識者会合でも「やや乱暴」「慎重に進めるべきだ」という意見が出ていた。政府は関連法改正案を今年の通常国会に提出する方針だが、強行すればマイナンバー制度への不信をさらに高めることになるだろう。政府は新制度の導入をやめるべきだ。
 新制度導入の背景には新型コロナウイルス禍に伴う経済対策で政府が国民に一律10万円を給付する事業で現金支給が遅れ、国民の不評を買ったことがある。デジタル化の遅れが影響した。
 政府は2020年6月、災害時などの迅速な現金給付につなげるためマイナンバーと預金口座のひも付けの義務化へ向けた検討を始めた。しかし、行政が個人の資産を把握することへ警戒感が強かった。口座を持っていない人への対応や、子どもを義務化の対象にするかなど検討課題が多く、20年12月にはいったん義務化を見送った。
 ところが政府はマイナンバー制度の普及に躍起だ。24年秋までに現行の健康保険証を廃止し、マイナンバーカードに一本化。同年度末までには運転免許証とマイナンバーカードを一体化する。その一方で、自治体ごとのカード取得率に応じ、地方交付税の配分額に格差を付ける方針だ。
 政府は事実上、カード取得の義務化に踏み切った。国民に取得を迫りながら、交付金給付額の増減で自治体を締めつける態度ではないか。
 そもそもこの制度が定着しないのは、多くの国民が必要性を感じなかったからである。さらには個人情報の安全性への不安や監視社会への懸念など、制度に対する国民の抵抗感がある。
 政府の個人情報保護委員会の年次報告によると、17年度から21年度までの5年間で少なくとも約3万5千人分のマイナンバー情報が紛失・漏えいしている。これらの課題をクリアしない以上、カード取得を国民に強いることはできないはずだ。
 総務省統計によるとマイナンバーカード取得率は昨年12月時点で国民全体の57・1%にとどまっている。沖縄は46・0%で全国最下位だ。この状況下でカード普及を促す施策を矢継ぎ早に打っても、国民の多くはメリットを感じない。口座ひも付けの新制度も受け入れないだろう。制度の安全性を高め、国民の信頼度を高めることが先である。




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