<社説>元徴用工韓国政府案 被害者が納得する解決を

 「戦後最悪」と言われる日韓関係の原因とされてきた元徴用工訴訟問題について、韓国政府が、日本企業の賠償支払いを韓国政府傘下の財団に肩代わりさせる解決案を公表した。原告側は「被害者を無視した売国的解決策」などと猛反発している。

 韓国MBCテレビの世論調査では、この解決案への反対が約64%と、賛成の約23%を大きく上回った。韓国政府が当事者や国民を説得するのは容易ではない。日本側は加害者として、被害者が納得する解決を目指す責任がある。
 1965年の日韓請求権協定では、日本が経済協力として5億ドルを供与し、両国と国民の間の請求権は「完全かつ最終的に解決された」と確認した。日本側はこれを根拠に個人への賠償責任を否定してきた。しかし韓国最高裁は2018年、「不法な植民地支配」に触れなかった日韓協定に縛られず、慰謝料請求権があると判断した。判決を支持した文在寅(ムンジェイン)政権に日本側が反発し、現在に至っている。
 15年には、安倍政権と韓国・朴槿恵(パククネ)政権の間での元従軍慰安婦に関する日韓合意が結ばれた。しかし、韓国世論から強い批判を浴び、政権交代で誕生した文政権がほごにしたことで、日本政府は不信感を強めた。
 ただ、日韓協定は、冷戦のさなか、朝鮮半島が南北に分断された中で、軍事独裁政権との間で結ばれたことを考慮すべきだ。両政府が放棄したのは訴えを外交的に取り上げる権利(国家の外交保護権)で、人権尊重の観点から個人の賠償請求権は消滅していないと指摘する識者は多い。
 核心は法解釈ではなく、被害者が納得するかどうかだ。元従軍慰安婦を巡る合意が韓国国民の批判を浴びたのも、被害者の納得が得られなかったからだ。同様に、元従軍慰安婦に「償い金」を支給する「女性のためのアジア平和国民基金」(1995~2007年)も成功しなかった。
 中国人の強制連行について、鹿島(2000年)、西松建設(09年)、三菱マテリアル(16年)など、企業側が謝罪を表明し基金を設けるなどして和解したことを参考にすべきだ。今回、被告企業の日本製鉄、三菱重工業が政府に委ねる態度を取っているのはおかしい。
 韓国政府の解決案は「原告側に直接受け取りの意思を尋ね、同意を求める過程を必ず経る」「日本側が既に表明した痛切な謝罪と反省を誠実に維持、継承すること」と強調している。日本政府、被告企業ともに、植民地支配と元徴用工への人権侵害に謝罪と反省を改めて表明し、韓国の財団に寄付する意思を積極的に示すべきではないか。
 東アジアの平和と安定のためには、いずれ北朝鮮とも平壌宣言に基づく交渉が必要になる。ドイツのように、関係企業が被害賠償の基金を創設するなど、将来の抜本的な解決に向けた努力が必要だ。




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