<社説>学校の産業医不足 教員の健康守る態勢築け


社会
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 このままでは学校現場で働く教職員の健康を支えることはできない。教員を守る態勢づくりを急いでほしい。

 労働安全衛生法で教職員50人以上の学校に義務付けられている産業医の選任について、沖縄県は全国平均の93・1%を大きく下回る68・8%にとどまっている。全国最下位であり、厚生労働省によると法令違反の可能性がある。
 教員の健康問題が問われている。全国の公立小中高・特別支援学校で精神疾患による教員の休職者が増え続けている。文部科学省の調査によると2021年度の沖縄の教員休職者は199人で、過去10年間で最多だった。在職者数に占める休職者の割合は全国で最も高い1・29%だった。
 精神疾患による休職者数と産業医選任率の相関関係を断定することはできないが、学校現場で教員の心身の健康を守る態勢が整っているとは言い難い。このままでは安心して学校で働くことはできない。教員不足の解消もおぼつかないであろう。
 学校に配置された産業医は働く教員の健康を維持するため、健康相談や職場環境の改善など多岐にわたる役割を果たすであろう。学校現場で教員が健康不安を覚えたとき、相談相手として頼りになるのが産業医であるはずだ。ところが、その相談相手が足りないのである。
 1人の教員が休職すると、他の教員の業務負担が増し、さらなる休職者が出る可能性がある。そのような悪循環を絶ち、健全な職場環境を維持するためにも法令に沿った産業医の配置は不可欠である。しかし、実情は厳しい。
 産業医選任が義務付けられている学校が複数あるにもかかわらず、配置がゼロという自治体もある。各市町村の教育委員会は産業医の確保に苦心している。なり手が不足しているのだ。
 このような法令にも抵触するような産業医不足の状況を放置してはならない。市町村教委単位での産業医確保が困難であれば、県・県教育委員会や県医師会、地域の医師会全体で解決策を協議する必要がある。教員も学校で働く労働者であり、過重労働が強く指摘されている。ぜひとも教員の働き方改革を進めなければならない。
 県教育委員会は23年度の組織改革で、教職員のメンタルヘルス対策と働き方改革の強化・推進を目的とした「働き方改革推進課」を新設する。課の取り組みの一つして産業医配置を議論してほしい。長時間労働に悩む教職員の相談相手となり健康を支える産業医が学校には必要なのだ。
 学校は地域の中にありながら、教員の職場環境は見えにくい状況にある。教員の悩みが直接外部に届くことはあまりない。職場環境の改善を進めるには地域の目や声が求められる。産業医配置はその一つだ。学校現場を守ることは子どもたちの学びを支えることにもなる。