<社説>オスプレイ不具合 国は即時飛行停止求めよ


社会
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 政府は危険な米軍機が飛ぶ地域で暮らす住民の不安を受け止めるべきだ。米軍の説明をうのみにしてはならない。

 垂直離着陸輸送機V22オスプレイのクラッチ関連部品不具合について、浜田靖一防衛相は「飛行停止などの措置を米側に求めることは考えていない」との姿勢を示した。米軍がシミュレーター(模擬飛行装置)を使用し、不具合を反映させた対処訓練をしているというのが理由だ。
 不具合が分かっていながら飛行停止を求めない姿勢は受け入れがたい。米側の模擬訓練を追認するだけでよいのか。政府は米軍普天間飛行場に所属するオスプレイの即時飛行停止を求めるべきだ。
 問題となっているのはエンジンの動力をローターに伝える部品。クラッチが突然再結合した際に衝撃が発生し、損傷を与える可能性がある。
 米政府は一定の飛行時間に達した機体の飛行を制限し、部品を交換することを日本政府に伝えている。ところが、住民の安全に関わる重要な情報が公表されていない。8日午前には米軍の飛行制限措置後、初めて普天間飛行場所属のMV22オスプレイの飛行が確認された。
 米軍は「運用体制に関わる」として対象機の所属部隊や機数を明らかにしていない。普天間の所属機が対象なのかどうかも不明だ。日本の防衛省も「米軍の運用体制に関することなので答えるのは難しい」という姿勢だ。
 基本的な情報を開示しないままでの飛行訓練は許されない。情報が少ないことに関して玉城デニー知事は「県民の不安は一向に払拭(ふっしょく)されない」と疑問視している。
 クラッチの不具合が判明したのは昨年8月である。米空軍のCV22が事故につながる可能性があるとして、米軍は全機飛行停止を指示した。陸上自衛隊の木更津駐屯地に配備されている機体の飛行も一時停止している。
 ところが普天間の所属機は飛行停止の対象とはならなかった。CV22とMV22の基本構造は同じである。同様の措置をとるべきであった。
 米海兵隊は2010年の時点でクラッチの不具合を把握していた。それを隠したまま県民の反対を押し切り、12年にオスプレイを普天間に強行配備したのだ。防衛省も16年の段階で不具合を把握していたことを昨年11月の国会で明らかにした。しかも、「機体の安全性に問題ないことに変わりはなかった」という理由で関係自治体に事実を知らせなかったという。
 日米双方とも住民の生命を軽視していると言わざるを得ない。まずはオスプレイの飛行を全面停止すべきである。その上で部品交換の対象となっている機体の所属部隊や部品の交換時期を明らかにする必要がある。普天間所属機に関しても政府は情報提供を米側に求めるべきだ。これらができなければオスプレイは撤去するしかない。