<社説>防衛力首長アンケート 一致して外交努力求めよ


社会
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 日本の安全保障政策を大転換させる安保関連3文書の閣議決定を受けて、本紙が県内41市町村長にアンケートを実施した。防衛力を強化する岸田文雄首相の方針や防衛費増額、南西諸島への自衛隊配備強化について、およそ半数が「分からない・無回答」「どちらとも言えない」と答え、政府の十分な説明や国民的議論を求めた。賛成は少数にとどまり、首長の理解を得ていないことが分かった。

 「中国を脅威と感じる」34人、「どちらとも言えない」7人で、脅威の認識を持つ首長が約8割に達した。防衛力強化が戦争回避につながるのかどうかで意見が分かれる一方、自由記述で7割超が政府に外交努力を求めた。全首長が一体となって「戦争準備より外交を」と政府や国民世論に働きかけるべきである。
 「分からない」などの多さは、政府の説明不足とともに、防衛の在り方に対する民意の揺れを反映しているようだ。「分からない・無回答」は、安保政策転換・防衛力強化では18人、防衛費増額では21人だった。
 「どちらとも言えない」は、自衛隊配備強化では20人(賛成12人、反対9人)、自衛隊の民間インフラ使用拡大では25人に達した(賛成7人、反対9人)。「敵基地攻撃能力(反撃能力)を有するミサイル部隊受け入れを打診されたら」の問いでは、受け入れる0人、受け入れない20人、どちらとも言えない21人だった。
 質問に対し、中村正人うるま市長は「国で決められたことに対して、コメントは差し控えさせていただきたい」、徳元次人豊見城市長は「国防に関して言える立場にない」と書いた。また、松川正則宜野湾市長、松本哲治浦添市長ら7人は、多くの質問に「賛成」を選びながらその理由を書かなかった。
 住民生活を守る責務がある行政トップが「国で決めたことだから」などという消極的な姿勢で済ませていいのか。賛成を選んだのならそれなりの理由を示すべきだろう。議会などでの議論を望みたい。
 南西諸島を最前線と想定した自衛隊の増強や日米共同訓練が行われ、沖縄が再び戦場にされかねないとの不安が強まっている。アンケートでは、避難など住民保護対策を求める意見も多くあった。しかし、戦闘行為がなくても、万人単位の避難は現実的ではない。避難シェルター設置も同様だ。住民保護は災害対策として考えることで、戦争を想定すべきではない。
 沖縄戦では、九州や台湾への疎開でも、沖縄本島中南部から北部への疎開、宮古島や八重山での強制疎開でも、深刻な食糧難やマラリアのまん延などで多くの人が犠牲になった。その教訓を思い起こすべきだ。
 沖縄戦の教訓を共有し「再び沖縄を戦場にさせない」を一致点にした全首長の決意と行動を求めたい。