<社説>ミス沖縄選出休止 多様性重視へ転換の時だ


社会
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 沖縄観光コンベンションビューロー(OCVB)は沖縄の観光や物産のPRに従事する「ミス沖縄」選出事業を休止する。社会的環境が大きく変わったことを理由に挙げた。

 ジェンダー平等の観点から、応募対象を女性に限定していることへの反発や、全国的な「ミスコン」見直しや廃止の流れなどが背景にある。
 この判断は評価できるが、遅きに失した感がある。性別や年齢、婚姻の有無、国籍などを問わない、地域・観光PRの担い手を選ぶ手法が全国で広がっている。観光立県である沖縄は率先して多様性を重視するPR手法に転換し、さらに広めるべきだ。
 全国で「ミスコン」は戦前から行われ、戦後は「女性解放の一つの象徴」と言われ急速に広がった。しかし「性の商品化」との批判が強まり、見直す企業や自治体が増えてきた経緯がある。
 そもそも地域や観光PRの担い手が女性でなければならない必然性は皆無だ。逆に男性を選ぶ「ミスターコンテスト」が広まればいいという問題でもない。多様性について、じっくり考える必要がある。
 まず、「男性か女性か」の二択では、その性自認の枠に当てはまらない人々を排除してしまう。セクシズム(性区別・性差別主義)を助長する問題もある。審査による評価が「女性らしさ・男性らしさ」という画一的な固定観念をつくる、あるいは補強する恐れがあるのだ。
 また、外見の良さで人を判断することを指す「ルッキズム」の問題もはらんでいる。これまでコンテストは、スピーチを取り入れるなど審査基準は多様化しているものの、外見を重視する傾向は否めない。「画一的な美の基準」で人を序列化することも多様性とは相いれない。
 こうした固定観念に陥ることなく多様な人々が生きやすい社会に向け、さまざまな価値観、生き方を尊重する考えに即したPR事業に見直していくことこそが重要だ。その動きは全国で広がっている。
 群馬県の伊勢崎市観光物産協会は昨年より「未婚女性」を募集資格から除いた。外国籍の住民も多いことから募集要項に国籍不問も明記した。愛知県一宮市の「一宮七夕まつり」は昨年、「未婚女性限定で容姿を審査する選考は時代に合わない」との理由で「ミスコン」を廃止した。県内でもオリオンビールがキャンペーンガールを2021年度に廃止している。
 年齢、性別、国籍などの属性や婚姻の有無ではなく、それに代わる基準でPRの担い手を選ぶべきである。地域や観光分野ならば、誇りに思う情熱や知識を問う手法もある。
 沖縄県や企業・団体が県内で進めている国連の持続可能な開発目標(SDGs)は、ジェンダー平等や人・国の不平等解消を掲げている。この観点から、観光分野だけでなく、さまざまな事業でPR手法を見直す時機に来ている。