<社説>県警警視児童買春 警察への信頼失墜した


社会
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 あってはならないことが起きた。女子生徒の尊厳を傷つける行為だ。警察への信頼は失墜したのではないか。組織に緩みがないのか厳しく検証し、再発防止に全力を挙げなければならない。

 交流サイト(SNS)で知り合った13歳の女子中学生に現金を渡し、性的行為をしたとして、県警は2日、児童買春・ポルノ禁止法違反(児童買春)容疑で県警警備部の警視を逮捕した。
 県内で摘発されたサイバー犯罪(摘発数の多い詐欺を除く)のうち、沖縄は未成年者が被害に遭う県青少年保護育成条例違反や児童買春・ポルノ禁止法違反の占める割合が全国平均より高い。県警はそのことを指摘し「警察などからの情報を確認し、被害防止につなげてほしい」と呼びかけていた。今回、犯罪を取り締まる側の県警から逮捕者を出したのである。
 2月にも栃木県警の警部補が児童買春・ポルノ禁止法違反容疑で逮捕されている。SNSで知り合った17歳の少女に現金を渡してみだらな行為をしたという、沖縄と似たようなケースだ。SNSがきっかけとなり児童・生徒を含む未成年者が性犯罪に巻き込まれる危険性があることを社会全体で認識する必要がある。
 県内では2017年にも16歳の女子高校生や14歳の女子中学生にみだらな行為をしたとして巡査長が逮捕されている。県警は「県民の安全安心を守る立場の警察官が、このような事案を起こしたことは誠に遺憾だ」とコメントした。その後、どれほどの再発防止策を講じたのか疑問だ。
 しかも、今回は警視という県警幹部である。警察組織の中で指導的立場にありながら児童買春容疑で逮捕されたのだ。事態は深刻である。県警は今回も「警察官としてあるまじき行為であり、関係者および県民の皆さまに深くおわび申し上げる」とのコメントを出したが、これだけでは県民は許さないはずだ。
 警察は説明責任を果たし、再発防止策の徹底を図るべきだ。まずは、学校など関係機関と連携しながら、被害に遭った女子中学生の精神的ケアに努める必要がある。その上で、中学生の人権に配慮しながら、警視逮捕について県警の責任者はきちんと説明すべきだ。来週始まる県議会の委員会などの場がある。記者会見を開いてもよい。
 警察で、このような行為を犯すのは一部の者だと言い訳することはできない。一人でもあってはならないのだ。犯罪を抑止できなかった理由は何か。警察組織内に原因はあるのかを見極め、早急に再発防止策を策定し、県民の前に公表すべきだ。さらには、未成年者を被害者とする性犯罪をどう防ぐか、沖縄社会全体で考えなければならない。
 信頼回復の道は険しい。しかし、避けて通ることはできない。県内全ての警察官は事態の重大さに正面から向き合ってほしい。