<社説>オスプレイ軍港使用 地位協定に県民の声を


社会
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 米軍那覇港湾施設(那覇軍港)に陸揚げされていた米軍の垂直離着陸輸送機MV22オスプレイが、県の反対を押し切って20日に離陸した。オスプレイの軍港使用は、この1年余りの間で4度目になる。

 年間10万回の離着陸がある那覇空港と主要幹線道路に隣接する那覇軍港で、安全性に懸念が残るオスプレイを使用することは県民の安全に対する重大な脅威だ。
 問題の根源は基地内の運用に日本の主権が及ばない日米地位協定にある。県民の不安を払拭するためには、地元の意思を反映した地位協定改定以外に方法はない。
 県が抗議するのは、周辺に住宅が密集し、多くの観光客が来る「表玄関」で「欠陥機」とさえ言われる航空機を飛ばすことへの不安があるからだ。
 オスプレイは沖縄配備前から構造的欠陥が指摘され、2016年には名護市で墜落事故も起こした。22年8月には基本構造が同じ空軍のCV22に不具合が判明し、全機飛行停止の措置が取られた。
 沖縄配備から10年たっても不安は全く解消されないどころか逆に強まっている。
 繰り返されるオスプレイの那覇軍港利用に関し、県は軍港の使用主目的である「港湾施設および貯油所」とした日本復帰時の日米合意(5.15メモ)に反するとも指摘する。
 これに対し米軍は「(主目的はそうだが)それのみではない」と抗弁する。沖縄防衛局も同様の考えで航空機の離着陸を排除しないという姿勢だ。
 訓練優先で何をしてもよい、というのは占領軍の発想だ。追随する日本も主権国家としての体をなしていない。
 背景にあるのは日米地位協定だ。第3条は基地内の管理・運営などのため米側が「必要なすべての措置を執ることができる」と定める。第5条は基地間の移動を自由にできると認めている。
 県民がいくら声を挙げようと、目的外使用だと指摘しても、地位協定に基づき「必要な訓練である」「普天間飛行場への航空機の移動である」ことを理由に米軍の意向が優先される。
 日本国民の安全よりも「抑止力」を名目にした米軍の行動を優先させる。日米政府のこうした考え方がある限り、問題は解決しない。オスプレイは昨年、青森県で低空飛行訓練を実施した。那覇軍港だけではない、危険な訓練は全国どこでも起こりうる。地位協定改定は沖縄だけの問題でなく、全国的課題でもある。
 一方で那覇市には今回、非公表を条件に事前通知が米軍からあった。市民への公表は米軍の意向で実現しなかった。知念覚那覇市長は軍港使用に抗議せず「一定の前進はあった」と評価した。
 だが県には事後通告しかなかった。米軍がどのような基準で判断したかは不明だ。市民の安全を優先するという点は、県も那覇市も一致するはずだ。決して分断されるようなことがあってはならない。