<社説>「同志国」軍支援 非軍事の基本に立ち返れ


社会
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 政府は価値観を共有する途上国の軍隊に資機材などを提供し、能力向上を支援する無償資金協力の枠組みを新設する。非軍事分野に限定してきた政府開発援助(ODA)とは別枠で、4月中に新制度「政府安全保障能力強化支援(OSA)」を決定する。今年夏、フィリピン軍へ監視機材を供与する方向で調整している。

 平和を基調とする日本の国際貢献から大きく逸脱するものだ。平和国家を追求してきた日本への信頼を裏切ることになれば国益を損ねる。国際貢献は非軍事に徹するという基本に立ち返るべきだ。
 政府の狙いは、民主主義や法の支配といった価値観を共有する「同志国」の軍に資機材を提供し、日本の安全保障環境の改善につなげることだ。中国の影響力を見据え、日本から途上国の軍を直接支援し、抑止力の向上を図るという考えが政府の中にある。ただ、中国との関係が深い国もあり、効果は不透明だ。
 何よりも日本が危険な方向へと進んでいくことに強い危機感を覚える。
 新しい制度の協力対象は国際紛争に直接関わらない警戒監視や人道支援、国連平和維持活動(PKO)などに限定する。提供資機材は防衛装備品の輸出ルールを定めた「防衛装備移転三原則」の範囲内にするという。
 政府が昨年末に閣議決定した安全保障3文書の一つである国家安全保障戦略は、「同志国」軍への協力枠組みの新設を明記している。今回の措置はその具現化と言えるが、歯止めのない武器輸出につながらないか。
 同戦略は「防衛装備移転三原則」の運用指針見直しの検討をうたっている。装備品輸出を防衛協力の「重要な手段」として意義付けているが、この見直しで武器輸出が一層進むことになれば、国際紛争を助長しかねない。
 政府は2014年、武器や関連技術の輸出を基本的に禁じてきた「武器輸出三原則」を47年ぶりに見直し、現在の「防衛装備移転三原則」を閣議決定した。これまでの禁輸政策を撤廃し、輸出拡大による安全保障関係の強化を目指したのである。
 「武器輸出三原則」における日本の基本姿勢は、平和国家としての立場から、武器輸出によって国際紛争を助長することを回避するというものだ。集団的自衛権の行使容認とともに三原則見直しで日本の防衛政策は大きく転換したのである。
 再び、「防衛装備移転三原則」の運用指針を見直し、武器輸出を促進することは平和国家の国是をかなぐり捨てる行為に他ならない。地域の緊張を一層高めることにもなる。容認することはできない。
 日本を武器輸出大国にしてはならない。平和国家の国是をいま一度再確認すべきである。政府は資機材提供など「同志国」軍へのOSAや「防衛装備移転三原則」運用指針見直しを撤回すべきだ。