<社説>PAC3展開 優先すべきは外交努力だ


社会
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 国際協調による外交努力が先決ではないのか。

 浜田靖一防衛相は22日、北朝鮮が打ち上げを計画する「軍事偵察衛星1号機」が日本領域へ落下する事態に備え、自衛隊に「破壊措置準備命令」を発出した。自衛隊は石垣市や宮古島市、与那国町への地対空誘導弾パトリオット(PAC3)の配備に着手した。23日には関連部隊が移動を始めた。
 政府は衛星打ち上げについて事実上の長距離弾道ミサイル発射とみている。過去の経緯や収集した情報を踏まえ、北朝鮮が沖縄方向に発射する可能性があるとして、迎撃態勢を整える構えだ。
 北朝鮮が打ち上げに踏み切れば、北朝鮮に弾道ミサイル技術を使った発射を禁じた国連安全保障理事会決議に違反するとして、日米韓は制裁強化を図る見通しだ。
 北朝鮮は13日にも大陸間弾道ミサイル(ICBM)を発射するなど、ミサイル発射を繰り返している。周辺の軍事的緊張を高める北朝鮮の動きは容認されるものではない。しかし、北朝鮮の挑発行為に軍事力で対抗することは、際限なき軍拡を招き、最悪の事態につながる恐れもある。国際社会が協調して平和的解決を図るべきだ。
 県内では、2012年4月と同年12月に、北朝鮮の発射計画を受けPAC3が沖縄本島、宮古島市、石垣市に一時展開された。13年以降、本島の航空自衛隊那覇基地、恩納分屯基地には常時配備されている。16年2月にも宮古島、石垣に展開した。
 今回の破壊措置準備命令でPAC3が配備される3町村には、2016年に与那国、19年に宮古島、23年には石垣にそれぞれ陸上自衛隊駐屯地が開設された。
 与那国駐屯地では、当初は言及されていなかったミサイル部隊の追加配備計画が開設後に明らかになった。住民への十分な説明もないまま、自衛隊が強化されていく例だ。
 今回のPAC3配備では、日本領域への落下が予想される場合の迎撃を想定しているとされるが、北朝鮮の「脅威」を理由に常時配備となる恐れもある。なし崩しの配備は許されない。丁寧に説明した上で、住民の意見を聞くべきだ。その意思が最大限尊重されなければならない。
 22年末に閣議決定で改定された安保関連3文書では、敵基地攻撃能力(反撃能力)の保有が明記されたほか、沖縄を含む南西諸島への自衛隊配備強化が明確に打ち出された。
 軍事施設が集中する地域は、紛争になった際の攻撃目標になる可能性が高い。在日米軍基地が集中する中、先島を含めた沖縄県内の自衛隊増強は、住民が戦闘に巻き込まれる危険性を高めることにならないか。まず政府が優先すべきは、国民が攻撃目標にならぬよう外交努力を尽くすことだ。軍事的対立の最前線に、沖縄が立たされることはあってはならない。